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ガイドの一般教養講座 研究発表vol.3:クレームあれこれ

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文:リュウ・タカハシ
イラスト:Ryoko
2009年6月2日


 こんにちは、ガイディング研究所専任研究員リュウです。

 いきなり大反響です。こんなマイナーな内容なのに、こりゃまたどうしたこった。
 Ryoko画伯のイラストのおかげ? なるほど、こりゃオッチャン一本とられたな。クソッ。
 ま、どちらにしましても、ありがたいことでございます。

 読者のお便りコーナー。

 まだざっと見ただけですが、突き抜けた文体とイラストに 意表を突かれました。どこまでコレを維持できるのかが当面の楽しみです。

 ウッ、鋭いッ! どうして僕が尻すぼみ野郎だってご存じなんですかッ!?

 でも、ガイディングに大切なのは緩急のリズムで、極意の一つは「アイスブレイク」、大和言葉でいえば「最初のツカミ」というヤツ。最初バァ~ッとテンションあげてお客様つかんじゃったら、あとはなんとかなります。この辺の具体的な話は、テンション下げつつ今後だらだらと研究していきましょう。

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 あ、そうそうイラストのRyoko画伯ですが、彼女は低テンションのまま突き抜けたイラスト描く人なので、今後ともこのままだと思います。ご安心を。



■ 英国人旅行者はこんなクレームをつける!? ■

 さてさて、前回の宿題、ちゃんとやりましたか? どんなクレームをリストアップしました? これから出てくる話と比べてみてください。「オレが書いたクレームの方が、もっとすごかったぞ!」という方、今からでも遅くありませんから、編集部までぜひともお聞かせください

 ちょいと余談ですが、ウェブ連載のいいとこって、いつでもバックナンバーが読めるとこですね。
 せっかくそういうメリットがあるんですから、掲載からう~んと時間がたってる宿題でも、こちらはいつでも回答例の提出大歓迎です。面白いものはどんどんご紹介します。古ネタをくりかえし掘りかえして、研究を進めていきましょう。

 話を戻してっと。
 先日、同僚が新聞切り抜きを持ってきました。オーストラリアのSydney Morning Herald誌なんですが、切り抜きなんで何年何月何日の何ページなのか不明で、ビブリオを書けません。ご容赦を。
 ともかくこれが抱腹絶倒だったので、かいつまんで引用してみます。

 何の記事かっつぅとですね、「英国人旅行者の、信じらんねぇクレーム集」です。

 まず先陣を切るのがこれ。

 「全部そっちの責任!」 と、とんでもないお土産を英国に持ち帰る羽目になった女性がわめきちらす。 「婚約者と私はツインルームを予約したのに、ダブルルームをあてがわれたから、妊娠しちゃったじゃないの、責任とりなさいよ!」


 オージー(オーストラリア人)って、我がキウィ(ニュージーランド人)と比べて物言いがダイレクトだといわれますが、さすがです、のっけから単刀直入ネタです。アイスブレイクですね。極意を分かってらっしゃる。

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 しかし、それって宿のせいですか。ホントですね?
 ならクレームなんかつけてないで、不妊症カップルにその宿を紹介する商売はじめたらどうです? 僕がやろうかな、そのエージェント。

 さて、お次はインドに行った英国人。

 「ゴアに行ったんだが、どのレストランもカレーを出しやがるから吐き気がした。私はスパイシーフードが嫌いなんだよ」


 このバガヤロ様め。
 おっと失礼しました。歳をくうとつい指が滑って、心のつぶやきをタイプしがちな今日この頃ですが、いかがおすごしでしょうか。
 こういうのって、ほんとスゴイと思いません? 勝手にインド旅行しておいて、カレーが出てきたって文句いうんですよ。スッゴイですねぇ、って感心してる場合じゃない。

 次もなかなかスゴイ。行き先不明ですが、南の島かな? オーストラリアかも。

 ある一家の旅行は、さんざんだった。その理由というのが「砂浜が砂だらけだった!」からで、さらに「海に魚がいるなんて聞いてなかったぞ! 子供たちが飛び上がっておびえたじゃないか!」だそうだ。


 マヂっすか、砂だらけでしたか。そりゃまた運の悪い。
 その点「ハリウッド」ことエイベルタズマン国立公園の砂浜は......、金色の砂だらけですよ。悪運にもほどがあります。
 あと魚って、姿みかけただけですよね? ツノから噴出する毒を浴びてたら大事ですからね、不幸中の幸いですよ。ピカチュウに変身しちゃうらしいですから。どっかの国には、田原俊彦に変身しちゃう「アハハアハハ光線」を目から出す魚もいるらしいっすから、要注意っすね。
 ったく。オマーラ、ロンドンから一歩も出るな、バガヤロ様(おっと、また滑っちまった)。

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 ほい、次。

 あるお怒りのご婦人の強い主張は、「トップレス日光浴禁止」......。
 「だってウチの主人、一日中ヨソの女眺めて過ごしたのよ! せっかくの休暇が台無しだわ!!」


 あのぉ、お言葉ですが、ご主人には最ッ高のホリデーだったのでは......?
 って、火に油を注いでみたりして。いやぁ、なぁ~んだかスッキリするなぁ、今回は。

 よーしどんどんいくぞ。次。

 「パンフレットに『No hairdressers at the accommodation』と書いてあったけど、オタクの宿って、私たち見習い美容師グループは泊めてくれないっていうわけっ!?」


 旅行行く前に、小学校行き直した方がよろしのとちゃいまっか? 日本の中学生が読んでも、「アンジョースンマヘン、ウチの宿は美容師雇ぉてまへんねん」っちゅぅ意味やて分かるがな、あんた。

 ほら次。

 「パンフレットの写真は黄色い砂だったのに、来てみたら白砂じゃないの!」


 ほぉ、大発見ですな。わざわざ行った甲斐があったじゃないですか、ハッハッハッ。

 バガヤロ様は放っておいて、キリキリいきましょう、次は二つ連発。

 「スペイン人だらけだ。受付もスペイン人だし、食事もスペイン料理ばっかり。」


 「ナマケモノばっかりだ。午後になると店がぜんぶ閉まってる。シエスタなんて習慣、禁止すべきだ。」


 そりゃ大変でしたねぇ。次はガラパゴス島なんかいいんじゃないですか? 南極とかシベリアもいいかも。
 つーか、よくこれで戦争にならないなぁ。大人の余裕?>スペイン

 次。

 「ウォーターパークへの遠足に参加したのに、誰も水着持参っていわなかったから、水着持っていかなかったわよっ!」


 「そんなのまだいいじゃないっ! 私なんて幼稚園に申し込んだのに、誰も子供連れてこいっていわなかったから、子供は家においてきちゃったわよっ!」
 ってか?

 次。

 「地元の店には、カスタードクリームとかジンジャーナッツとかの、『正統ビスケット』は売ってないって、ちゃんとパンフレットに書いておくべきだ」


 あぁ、同感ッすねぇ。ついでに「本場香川の讃岐うどんも食べられないし、武蔵野名物油ソバもどこにもない、広島風お好み焼きなんかは絶望的だ」って書いておいて欲しいもんッす。どこの国の話か存じませんが。

 次。

 「蚊に刺された! 蚊が刺すだなんて、誰もそんなこと教えてくれなかったぞっ!!」


 コブラに噛まれた! コブラが噛むだなんて、誰もそんなこと教え......、ウッ......!!

 なかなかすさまじいでしょう? 腹筋大丈夫ですか? 僕は最初読んだ時、あやうく命を落とすところでしたが。

 ところで、なんでこんなものを引用したと思います? 別に笑っていただくためじゃないんですよ。いや、それもあるんですけど、でも「ガイドの一般教養講座」らしい理由も、ちゃぁ~んとあるんです、一応。

 それはですね。

 あっ! ここで字数がつきました。この続きはまたこんどということにしましょう。
 って、そればっかりかよ。

 もてもて講座を期待して今回よんで下さった方、スミマセンねぇ、こんな内容で。でもここに出てきたようなクレームつけてるともてませんからね、気をつけてくださいねぇ。



■ 今回のまとめ ■

  1. 瓢箪から出るのは駒、ブッキングミスから出るのは赤ん坊。
  2. 英国の砂浜には砂はありませんし、海には魚はいません。
  3. 魚はピカチュウ毒と田原俊彦アハハ光線を出します。要注意。
  4. 海外旅行の間は、讃岐うどんや広島風お好み焼きはがまんしましょう。
  5. 英国は、そのうち外国からいっせいに攻められるかもしれません。
  6. 蚊は刺します。
  7. とにかく旅行者は、言いたい放題です。
  8. 研究員リュウは、指をぞんぶんに滑らせて、10年間のウップンをはらしました。
  9. 次はあなたの国の秘密を暴露します、ゆめゆめ油断しないように>○○人とか△△人とか


■ 次回予告&宿題 ■

 次回は、今回の続きでクレームのガイディング研究所的活用法、だと思うでしょ?
 ブッブーッ、残念でした、そう簡単には(以下同文)。

 クレームの続きは後回しにして、次回のテーマは、「今の日本のアウトドア業界の問題点」にします。

 宿題。あなたなりに、問題点を考えておいてください。ちなみに「アウトドアツアー業界」じゃなくて「アウトドア業界」ですから、ご注意を。
 もちろん編集部まで回答をお寄せいただけると、もっとうれしいです。研究にご協力を!

 ではまた!



■ オマケ ■

【ガイドのトリビア #001 乗り物酔い】

 軽く考えがちですが、実は乗り物酔いって急性の重病です。嘔吐、下痢って、ひどい病気でしょ? 場合によっては脱水症状→熱中症(あるいは低体温症)と進行しますから、シャレになりません。そうでなくても動けなくなりますから、グループ全体が危険にさらされる確率はグッとあがります。

 ですからアウトドアガイドに限らず、バスガイドだろうと添乗員だろうと、乗り物酔い対策は大問題です。

 僕の専門のシーカヤックは、特に乗り物酔いの多いアクティヴィティの一つです。詳しくはまた別の機会にゆずりますが、経験豊富なガイドは新米ガイドよりもお客様の船酔い率がずっと低いものです。

 ところがそのほとんどが「防止策」で、いったんお客様が気持ち悪くなってしまったら、もう休ませる以外には手がない、というガイドが多かったんです。
 でも僕は、二つの「対症療法」も用意していて、かなりの成果をあげていました。

 そのうちの一つはその辺に生えている木の葉を使ったハーブティーで、効果バツグンなんですが、残念ながら日本にはない、ニュージーランド特産の木なので、今回は割愛します。見守ってる他のお客様にとっても「うわ、スゴイ!」ってな技なんですけどね。

 もう一つの方法は日本でも使えます。イラストのRyoko画伯は、ちゃんと資格を持ってるアロマセラピスト。彼女に教わった方法です。
 アロマセラピーに使うペパーミントのエッセンシャルオイル(精油)には、強力な吐き気止め作用があるんです。
 使い方は簡単、ペパーミントオイルの匂いを嗅がせるだけです。吐き気がスッとひきます。僕も風邪ひいたまま長距離バスに乗った時、あと一歩で吐くというときに、この方法で救われた事があります。効きます。

 ただし、三つの注意事項があります。

  1. ペパーミントオイルは非常に皮膚刺激の強いオイルです。ぜったいに原液のまま皮膚につけてはいけません。ハンカチとか襟元に一滴垂らし、触れないように気をつけながら、匂いをかぐだけにします。
  2. ペパーミントの匂いが嫌いな人がときどきいます。たとえば、お父さんの自動車の芳香剤がペパーミント系で、しかもその車に乗るたびに車酔いしていた、なんていう幼児体験を持つ人には完全に逆効果ですし、そこまで極端でなくても、ペパーミントの匂いに不快感を持つ人には逆効果です。本格的に嗅がせるまえに、瓶の蓋をとって「この匂い、平気ですか? 嫌いですか?」と確認しましょう。すごく遠慮がちで「嫌い」といえない人でも、酔ってるときに嫌いな匂いを嗅ぐとオエッとなるので、よく見てれば一目で分かります。
  3. インテリア雑貨屋などには、フレグランスオイルなどと称して、アロマポットなどで部屋に匂いをたてるための芳香用オイルを売っていたりします。こういうのは安いんですが、純粋な精油ではないため、匂いにも不純物(合成香料)がまざっていて、たいていの場合は乗り物酔いには逆効果です。高価ですが、ホンモノの純粋なアロマセラピー用ペパーミントオイルを使用しましょう。

 二日酔いに効くかって? 未検証です。研究報告をお待ちしております。っつーか、二日酔いのお客様は、アウトドアツアー参加はお断りしましょうね(笑)

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