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ガイドの一般教養講座 研究発表vol.4:ハードウェア偏重?

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文:リュウ・タカハシ
イラスト:Ryoko
2009年6月15日


 こんにちは、ガイディング研究所へようこそ。研究員のリュウです。

 「ニュージーランド歯をくいしばってのんき暮らし」へのたくさんのファンレターのうち、10通に1通くらいの割合で当研究所への励ましも書きそえてあったりします。ありがとうございます。
 当連載、e4MEDIAオープン直後なので今はひんぱんに更新してますけど、じつは月刊の予定です。この調子なら月刊化してもクレームは出そうにないので、ホッとしてます。
 なになに? 文章は月刊でいいけど、挿絵は週刊にしろ? んなアホな。



■ 読者のお便りコーナー ■

 10通に1通の貴重な励まし、心して拝読。

ガイディングという概念は、社会生活全般や会社組織なんかにも役に立ちますよ。
人間が複数集まって、様々な活動をすれば誰かがまとめ役をしたり役割分担も生じる事がありますし。
スタッフ達をどう動かすか(気持ちよく動いてもらうには)、コンセンサスを取りながらも仲間意識を持たせると仕事がスムーズに運ぶケースが多いですしね。

 もう一つ、別の方から。

少しターゲットを拡げられて良いのではないかと思いました。
僕が直感したのは、リュウさんがもっているガイディングのノウハウは一般のサラリーマンやお父さんにも役立つのではないか、と云うことです。

と言うのも、数年まえ友達からセミナーコンテンツの製作・構成・演出を依頼された事があったのですが、そこで気づいたことは、人に情報・技術・感動を伝える大変さとやりがいです。
そしてその場には「エンターテイメント」が不可欠であるということです。
これらのことは一般のビジネスシーン(商談、接客等)でも同じではないでしょうか。
また、家族間のコミュニケーションやイベント(旅行、誕生会等)にも応用する技術があれば、きっと楽しい時間を共有することができるのではないでしょうか。
海外の一線で活躍したガイディングプロのノウハウは一般の人達にも役立つことができるのではないかと・・・

 大感激でごじゃりまする。
 っつーか、まともなコンテンツを出していない現段階で、どうやったらこんなに深読みできるんですかっ!? 身が引き締まって●ンタマが縮み上がる思いです。

 ご指摘の通り、ガイディング技術って、すごぉ~く応用範囲のひろぉ~~いたいへぇ~~~んに便利なモノです。でも調子こいて風呂敷ひろげると、作文能力がますます追いつなくなっちゃうんで、読み替えは皆さんにおまかせします。お仕事で、ご家庭で、恋愛にと、どんどんご活用いただければ、こんなにうれしい事はございません。

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 これで僕も、もう思い残すことは何もなくなりました。ではさようなら。

 と、ありがちなボケを一発かまして軽くスベッたところで、今日の本題にいくとしましょう。
 宿題は「今の日本のアウトドア業界の問題点」でした。以下、当研究所なりに指摘してみたいと思いますので、ご自身の宿題と比較してください。
 今回は、いきなり応用の利きにくい内容で、家族間コミュニケーションのお役には立てないかもしれません。画伯も頭かきむしって苦しんでいるようです。



■ ソフトウェア不在のIT業界!? ■

 PCショップにいくと、PC、モニタ、キーボードなどは売ってるが、ソフトウェアがほとんどなく、わずかにあるのはベテラン向けだけ。ブラウザでさえプロ用の複雑なアプリで、インターネットは専門家だけのもの。
 でもカッコイイので、素人もファッションアイテムとしてPCを購入。

 もちろんフィクションのたとえ話です。
 不気味な設定ですね。方針変更して、このままSFホラーの一本でも書いちまおうかな、その方が儲かるかも......。



■ ソフトウェア不在のアウトドア界!? ■

 気をとりなおして続けます。SFホラー書ける人はゴマンといますが、当研究所は人材不足です(研究者大募集中!)。

 ITをアウトドアに置きかえましょう。僕には日本アウトドア界がこんな風に見えてるんです。やっぱりSFホラー......(以下同文)。
 そういや日本アウトドア界の場合はノンフィクションですね。よけい恐ろしいじゃん......。



■ アウトドア界のソフトウェアって? ■

 情報産業はソフトウェアですね。アウトドア界の場合、たとえばアウトドア雑誌やアウトドア関連ウェブサイトなどが該当しそうです。
 またアウトドアツアーやスクールなどのアウトフィッター業は、花形ソフトウェアです。政府が旗をふってるエコツアーや子ども農産漁村交流プロジェクトも、これに含まれます。

 対するハードウェアは、アウトドア道具やウェアの製造販売業です。



■ どちらが主役? ■

 いうまでもなく、「アウトドア」って「野外遊び」のこと、つまりソフトウェアが本質です。
 なら「アウトドア産業」ってのは「ソフトウェア中心の産業」のはずです。

 でも実情はどうでしょう?>日本アウトドア界

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 NZをはじめ、アウトドアがメジャーっていう国もありますが、日本ではマイナーです。
 なのに、海外の超有名アウトドアブランドの中には、もし日本で売れなくなったら倒産する、なんて会社が少なくないそうですよ。マイナー国の売り上げが、世界トップブランドの死活問題......。変だと思いません?



■ 経済研究所のレポート ■

 ある経済研究所のアウトドアビジネスレポートを、ウェブ上で拝見したことがあります。このレポート、みごとにハードウェアのことしか扱っていなくて、偏重ぶりが如実だったんですが、「アウトドアビジネスのマイナス成長要因」の分析結果として、
「マーケットを引っ張って伸び続けていた『シューズ』『ザック類』のマイナス成長」
ってなこと書いてありました。

 それでおしまい? 「シューズ、ザック類のマイナス成長要因」は分析しないで良いんですか?

 これじゃどうも気持ち悪いです。当研究所が引き継いで、もうちょっと突っこんでみましょう。
 なぜクツとザックが売れなくなったのでしょう?

 簡単なことです。「エントリ層に行き渡ったから」ですね。
 アウトドア道具は丈夫で、PCほどひんぱんに買いかえなくていいんです。PCって高いクセに、ホンット寿命短くて、まったく頭にくるったらありゃしない! 永久保証のPC出してください>ビクトリノックスとかレザーマンとか
 おっと脱線。
 つまりクツやザックは、いつまでも右肩上がりを維持できるはずがないんです。ブームが定着すれば、そのうちにいっせいに買いかえ時期が来て、急に売り上げが一時的に伸びることもあるでしょうが、先の話です。



■ ということは? ■

 ハードウェア偏重の視点だと、「売れなくなった、由々しき状況だ、新たなるマーケット開拓が必要だ、ついては~」という展開になるんでしょう。

 そうですか? ソフト業者の僕には、そうは思えませんが。
 これはアウトドアに興味をもった人たちが、一通り道具をそろえたという状態です。
 つまり、「よぉ~し、遊ぶぞぉ!」とか「うわぁ、楽しかったぁ、また行きたいっ!」って熱に浮かされたように張り切っている人がウジャウジャいる、という状況に見えるんですが。

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 これはアウトドア業界凋落の忌まわしい証拠などではなく、アウトドア界が本格的にソフトウェア業中心に回転可能になった絶好のタイミングを示していた、というのが当研究所の分析結果です。

 ハードウェア偏重派とソフトウェア重視論者とでは、これだけ違った見解がでてきます。面白いっしょ?

 さてここで問題、どっちが健康的で前向きですか?



■ ハードを売りたければ ■

 ソフト不在でハードを売ろうと思ったって、そりゃ売れませんってば。テレビゲーム機といっしょです。
 逆にソフトが充実して野外で遊ぶ人が増えれば、自然にハードの消費だってまた右上がりになります。道具を売りたいんだったら、まず使わせなきゃ。
 ですから、アウトドアグッズを売るための研究よりも、ガイディングの研究をやってみましょう、っていうことですね。

 っつーか、そもそも「アウトドア」って「消費」すべきものじゃないですよね。



■ ちなみにIT業界も ■

 そういえばIT業界も、僕が子供の頃はIBMがトップでした。ハードウェアが産業の中心だったんですね。
 ご存じのとおり、今はマイクロソフトやグーグルなど、ソフトウェア会社の天下。

 それ考えると、アウトドア業界にも一筋の光明が見えたような気もします。



■ 今回のまとめ ■

  1. アウトドアの正体は、ソフトウェアです。
  2. 日本アウトドア界は、ハードウェア中心です。
  3. アウトドア道具を死蔵してる人はたくさんいます。
  4. 彼らは、ソフトウェア業の潜在マーケットです。
  5. 誰でもインターネットが簡単に使える世の中で、本当によかったです。
  6. もう誰もRyoko画伯を止められません。誰か止めてくれ。


■ 次回予告&宿題 ■

 さて、次回の研究発表は、「アウトドア・ガイドってぇのは、いったいどういう職業なんだ?」です。

 宿題は、「アウトドアガイドの業務をリストアップ」です。
 あなたなりの回答を用意しておいて、当研究所の見解と比べてみてください。これが宿題。もちろん編集部まで回答をお寄せいただけると、もっとうれしいです。研究にご協力を!

 ではまた!



■ オマケ ■

【ガイド小噺こぼればなし 其の弐】

 やっぱり二泊三日のキャンプツアー中のお話でござい。参加者同士すぐに打ち解け、和気アイアイ冗談ポンポン、ガイドにとっちゃ楽ちんなツアーでした。
 こういうとき、ムードメーカーはたいていイギリス人です。あの国のシトたちって、なんであんなに冗談がうまいんでしょう。やんなっちゃう。
 このグループも、やっぱりイギリス人の男の子がみんなに好かれてて、冗談いうたびにツッコまれまくりで、アタシの出る幕なし。

 で、アタシゃ晩ご飯作ってたわけです。可愛らしい金髪の女の子たちが、野菜刻んで手伝ってくれてました。あぁ幸せ。
 さぁ、そこに軽やかなステップで登場したのが、例のイギリス君だ。
 「あ、料理? よぉ~し、僕も手ッ伝うぞぉ! 料理はしたことないけど、まっかせろぉ!」
といい終わるか終わらないかのタイミングで、これまたバカ陽気なアメリカ人の男の子が、後から彼をガバッとスリーパーホールドで固めて秒殺しながら、

 「バカヤロ、せっかく日本人シェフが料理してるんだ、イギリス人なんぞが手を出すな! ディナーを台無しにする気か!
 イギリス人は、朝飯作ってりゃいいんだ!」

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