テーマ [ガイディング研究所]
ガイドの一般教養講座 研究発表vol.12:「ガイド志望なんですが」#01
文:リュウ・タカハシ
2009年11月12日
■ 読者からのお便り ■
こんにちは、研究員のリュウです。
お便りをいただきました。
はじめまして。
Mと申します。
ガイドの一般教養講座、いつも楽しく、また非常にありがたく拝見させていただいております。
ところで、今サラリーマンをやってるのですがいずれネイチャーガイドに転職したいと考えています。
「転職するにあたり事前に何をしておくべきか」、
といった相談をさせていただけるものでしょうか。
お忙しい中恐縮ですが、もし可能でしたら具体的な計画なども交えて相談させていただけますと幸甚です。
以上よろしくお願いいたします。
実際に夢をふくらませてる方からです、嬉しいじゃぁありませんか。
今は「ガイドの一般教養講座」だけのいささか寂しい当研究所ですが、将来的にはリクルート研究室もぜひとも開設したいと思ってます。情報不足、力不足、人材不足の三拍子が揃っておりまして、開設にはまだ時間がかかりそうなのですが、お問い合わせをいただいたからにはがんばらなくてはいけません!
というわけで、Mさんに質問状を送っていただきました。
■ Mさんの具体的なご計画とご質問 ■
原文は長いので要約し、さらに質問以外の部分は「です・ます調」を「だ・である調」に書きかえさせていただきました。
<質問>
- 2年後にネイチャーガイドになることを計画しています。やっておいたほうが良いことは何でしょうか?
⇒体力は必須と思って、まずは筋トレとランニングを始めました。
- 現在三十代半ばですが、三十代後半から始めてやっていけるでしょうか?
⇒本人のやる気しだいと信じてますが、どの程度ハードな仕事なのかまだ体感できていないので、不安な面があります。
- ネイチャーガイドだけで生活していけるでしょうか?
⇒妻と子供(二人ないし三人を計画中)を養っていく必要があります。一般的にガイドだけで生活できるものでしょうか。副業も必要でしょうか。子供の大学進学を最低限と考えています。
<プロフィール>
- 北海道出身
- 三十代半ば、妻と子供一人、現在は関西でエンジニア
- 趣味はゴルフ、サッカー、スキー(3級程度)、ハイキング(近所の山歩き程度)
- 人と話すのは大得意ではないが好きなほう
- 面倒見は良く、人を喜ばせるのは好き(結婚式の2次会や飲み会の幹事などよくやっていた)
- ガイドに必要な知識、スキルなどは特に保有していない
- 泳ぎは苦手
- 英語は海外旅行してご飯を食べる程度、日常会話はほとんど出来ない
- 何でもある程度すぐ出来るほう。悪く言えば器用貧乏。
<ネイチャーガイドとして目指すところ>
- ニセコでの活動を考えている
- 夏はカヌーやラフティング、山の散策ガイドなど、冬はクロカンガイドなど(そういう会社を探している)
- まずはガイド会社で経験を積み、いずれは独立を希望
<ネイチャーガイドを目指すきっかけ>
関西で就職しているが、いずれは北海道に帰りたいという漠然とした希望は持っていた。
それがあることから自分の将来について深く考える機会があり、本当に自分がやりたいこと、向いていることは何なのか、と考えた結果、やはり北海道の中で体を動かす仕事がしたいのだ!ということがはっきりした。そこで、かつて自分もガイドをしてもらった経験のあるネイチャーガイドを思いついた。
最初は、本格的な山登りの経験も無い、ボーイスカウトなどやってた訳でもない、草花などに詳しいわけではない、カヌーが出来る訳ではない・・・と向いている要素が全然ない、とあきらめかけたが、リュウさんや他の方のHPで「ネイチャーガイドはサービス業である」という事を理解し、むしろ自分に向いている職業だと思い、目指すことに決めた。
<その他>
妻は関西出身だが、北海道暮らしに憧れてくれていて私の夢にも賛同してくれている(妻も金銭的裕福さはあまり求めていない)。こちらにいるうちに二人目を作りたいと思っているのと、ガイドになるための準備、移住に向けた住居やガイド会社の調査などもろもろを考えて、今は約2年後の移住を計画している。
さてさて。
この手のご質問は以前からちょくちょくいただいてましたが、ここまできちんとまとまったお問い合わせは初めてで、正直感激しました。
ところがそういうときに限って、こちらが力不足でビシッとした回答を差し上げられなさそうってのが、何とも痛いところ......。
しかし捨てる神あれば拾う神あり、タイミング良く心強い助っ人に回答のお手伝いをしていただけることになりましたので、僕も気合いを入れて知恵を絞ってみることにしました。
■ 2年間でやっておくべきことは? ■
- Mさんのおっしゃるとおり、アウトドアガイドは、一に体力、二に体力、三四も体力、五に体力、身体は鍛えておくにこしたことはないと思います。
専業ガイドは長丁場の仕事が毎日続くので、ハイシーズン中の疲労は相当なものです。スポーツ的な筋力やスタミナ以外にも、こうした蓄積疲労とのつきあい方も研究しておかれた方がよろしいかと。
ちなみにプロレスファンの僕の場合は、
「レスラーは地方を回りながら年間200日以上これ以上きつい仕事やってるんだ! 負けてたまるか!」
と我が身に鞭を打つのが、蓄積疲労とのつきあい方でした。これが引退を早めてしまったような気もします。根本的に何か間違っていたかもしれません。
- 北海道には道が認定するアウトドアガイド資格があるはずですから、十分な下調べが必要だと思います。
資格の準備段階では、僕もシーカヤック部門の試験要項に目を通したりしたんですが、現在の運用の実情などはまったく把握していないので、情報を差し上げられないのが情けないやら申し訳ないやら。
- さらに大切なことは、ネットワーク作りかもしれません。同業者の知り合いを作るのはもちろんのこと、どんな仕事の人でもいいですからニセコに人脈を作っておくのは大事だと思います。欲をいえば、現地の宿、タクシー会社、バス会社、飲食店、旅行代理店などのツーリズム関係の人脈が欲しいですね。
もちろんご家族のために、保育所、幼稚園、学校、託児所、奥様の職場などを見据えた人脈作りも忘れちゃいけませんね。特に将来的に独立を考えていらっしゃるなら、奥様が子供さんを任せられるような友人とか託児所は絶対に必要になってきます。
- あとは、実際にガイドの仕事をよく見ておくこと、でしょうか。仕事を覚えるのは就職してからになるでしょうが、アマチュア時代にプロの仕事をたくさん見ておけば、きっと修行の成果に差が出ると思います。
■ 今回のまとめ ■
今回に関しては、まとめは必要なさそうですね。といいますか、まとめるのが自分でもいやになるほど散漫な回答(^_^;
まとめは次に回します。
■ 次回予告&宿題 ■
次回は、今回の続きです。強力な助っ人回答者からのアドバイスも、次回掲載の予定です。お楽しみに。
Mさんのご質問の2番と3番に対する回答を、皆さんご自身でも考えてみてください。これを宿題にしておきましょう。実際に編集部まで皆さんの回答案をお寄せいただけると、もっとうれしいです。研究にご協力を!
■ オマケ ■
【ガイド小噺こぼればなし 其の六】
しばらくガイドなんぞをやっておりますと、お客様との会話ってヤツもだんだんとパターン化されてまいりますな。最近はFAQっていうんですか、質問されることってぇのはだいたい決まっておりまして、毎日「よくある質問」に「いつもの回答」の繰り返しになりがちでございます。
ありがちな質問の代表に、「カヌーとカヤックって、どう違うの?」なんてのがございます。この質問を受けるは、日課みたいなもんでしたね。
単純な質問ですが、案外答えるのが厄介なんです、これ。細かいこといいはじめるときりがありませんし、大論争にもなりかねないんですが、アタシの場合は
「デッキがあって足を投げ出して座るのがカヤックで、イヌイットが海でつかってたのが起源。デッキがなくて椅子に腰掛けるのがカヌーで、この形の艇は世界中にあった」
ってな感じで答えてました。
ある日、台湾人の女の子が「Ryu, what's the difference between kayak and......」って言いはじめたので、「あぁ、また例の質問だな」と思ったわけです。
ところが驚きましたね。
「What's the difference between kayak and gondola?」
ご、ゴンドラァ!!??
頭ん中真っ白になりました。
えっと、ゴンドラっていちおうカヌーの一種だよな。
でもカナディアンカヌーとゴンドラってどこが似ててどこが違うんだっけ?
カヤックとゴンドラ?
北極海とベネチアの運河?
ゴンドラって黒一色に決まってたよな、確か???
頭の中に断片的な知識が入り乱れて、パニックでしどろもどろになっちまいましたよ。思えば10年間のガイド生活で、一番とりみだしていたかもしれませんな......。
なめちゃいけません。慣れてきたころが怖いんです。いろんな方がいらっしゃいます。いつも気を引き締めておきましょうという教訓でございました。
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