コラム [Viva New Zealand]
水に流したその先は?
文&写真:リュウ・タカハシ
2009年7月3日
前回の「湯水のように使っても大丈夫?」、けっこう反響いただいてしまいました。「驚いた」という声が多いようで、やっぱり日本って、「安全はただじゃなくなったけど、水はまだ大丈夫」というイメージが根強いんだなと改めて感じました。
確かに工業化が進む前の古き良き時代は、わりとぜいたくに水を使えたようです。江戸っ子なんて一日に何度も銭湯に通ってたそうで、「垢抜けてる」っていう言葉もそこから来ているんだとか。各家庭に内風呂がなかったのは、水が足りなかったからというより、燃料代の関係だったようですね。
そういう時代にできた水にまつわる言い回しなんて、いつまでも全部が全部今の世の中で通用するはずないですよねぇ。「湯水のように」なんてのは、まさにその典型ではないかと。
そういえば『007 / 慰めの報酬』も、テーマは石油と見せかけて実は......、でしたね。ネタバレ注意(って、バラしとるやないかぁ!)
他には「水に流す」という表現があります。キレイサッパリ忘れてなかったことにするという、とっても良い言葉です。そうじゃなきゃ、世の中世知辛くなっちゃって、うまく回りませんよね。僕なんかどれだけ流していただいて生きながらえていることやら。ありがたい、ありがたい。
言葉の意味はともかく、さて実際のところ、今の世の中で水に流しちゃったものって、キレイサッパリなくなってるんでしょうか?
古い時代は、やっぱりそうだったんでしょう。生まれて死ぬまで村から出ないなんて人がゴロゴロいた頃なら、川に放り込んだモノは「消えてなくなった」も同然だったでしょうし、その頃のゴミってそもそもすぐに分解されて自然に戻るモノがほとんどだったはず。
でも今はどうですか? 交通手段が発達して国土がせまくなり、人口も大爆発して一億二千万を数えています。川に放りこんだプラスチックや金属のゴミ、キレイサッパリなくなりますか?
やっぱり水にまつわる言い回しって、どうも最近の情勢とうまくかみあいませんね。
この写真、ニュージーランド(NZ)南島の北端近くの街ネルソンを流れるマイタイ川です。ネルソン市の人口は6万人弱。日本の田舎町程度ですが、NZだと全人口(430万人)の1.4%ですから、日本だと百万都市に相当します。なんていうとさすがにちょっと大げさですが、まぁ日本の50万都市くらいのイメージでしょうか。国の中では、決して小さな都市ではありません。
能書きが長くなりましたが、その町中を流れる川を見てください。別にゴミのないところをわざわざ選んで撮ったわけじゃありません。アドビ・フォトショップでゴミを消したわけでもありません。ホントにゴミなんて落ちてないんです。
ここからほんの数百メートル先が河口で、ネルソン港にぶつかります。そこまで行っても、実はゴミはほとんどありません。日本だと河口港湾なんて、ゴミためと同義ですけどね。
こちら、僕が長年働いていたエイベルタズマン国立公園です。ご覧の通り、チリひとつ落ちてません。当たり前です。だからこそ、世界中から観光客が押しよせてくるんです。キレイでしょ。
国立公園がキレイなのは当たり前だろうって? レンジャーが掃除してるだろうって? なるほど。ま、確かに自動車が入れる道路もありませんしね。
ならば国立公園のすぐ南にある、NZ人気No.1といわれるビーチリゾート、それどころか英国ガーディアン紙が「世界トップ5ビーチ」の一つに選んだカイテリテリはどうだ! ここは国立公園じゃないのでビーチの前を道路が通ってますし、レストランやモーターキャンプ場、宿などが建ち並び、ウォータータクシーの発着所としても、一般用のボート発着所としても使われるので、夏になると日本の海水浴場かと思うような混雑になるところです。でもどうです、ゴミみえますか?
エイベルタズマン国立公園やカイテリテリの美しさと、マイタイ川にゴミがないことは、もちろんキチンと繋がっています。水に流さないから、国立公園もキレイなんです。なんせネルソン市とカイテリテリの直線距離は、わずか30kmくらいです。エイベルタズマン国立公園もそのすぐ北ですから似たようなもの。潮に乗ればゴミなんて一日で流れ着きます。
海が汚れてるからって、ビーチを掃除しただけでキレイに出来るもんじゃありません。全国民の美意識がポイントですね。NZが美しいのは、別に人口密度が低いからってだけじゃなさそうですよ。
町中の道路だってゴミはほとんど落ちてませんよ。そのことは、また後日改めて。
おぉ、いつのまにか今回の特集記事「瀬戸内ゴミゼロプロジェクト」とぴったりマッチする記事を書いているではないですかぁ! 僕ってば天才?
って、アホいってないで、ビール呑んで寝よ。おっとその前に、そこに落ちてるゴミを拾って、ゴミ箱にポイっと。水に流しちゃいけません。
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