コラム [Viva New Zealand]

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僕らが見たかったのはカミカゼアタックだったのに......

文:リュウ・タカハシ
2011年9月26日

RWC-2011-2nd-col-logo_5850.gif  Ryoko画伯が『ニュージーランド歯を食いしばってのんき暮らし』にも書いてるように、ラグビーワールドカップ2011がニュージーランド(NZ)で開催中です(ウィキペディア「2011 ラグビーワールドカップ」)。

 ご存じの通り、ラグビーはNZの国技。
 何、ごぞんじない? 黒ずくめのオールブラックスっていう最強チームのことくらいは、聞いたことありますよね。あれがNZ代表チームです。
 先住民マオリのウォーダンス「ハカ」が世界中で知られてるのも、もともとはオールブラックスが国際試合のたびに披露していたからです(今では他のスポーツでもNZ代表はハカをやることが多いです)。

 ◎YouTube「New Zealand All Blacks Rugby Haka - HD」

 ラグビーワールドカップって、FIFAワールドカップ、夏季オリンピックに次ぐ世界で3番目に大きなスポーツイベントなんですが、驚いたことに日本では今回TV放映権に買い手がつかず、結局押しつけられちゃった日テレは仕方なく深夜にダイジェストを流しているだけなんだそうですね。
 今大会の開催権をニュージーランドと争ったのが日本だったそうですし、8年後の2019年大会は日本開催なんですけど、そんなんで大丈夫なんでしょうか......?

 ま、それはともかく。
 小さな国ですからどんなこぢんまりとした大会になるかと思ってたら、意外や意外、開会セレモニーの見事なショーにドギモ抜かれてしまいました。マオリの国造り神話からラグビー王国への歴史をとっても上手にショーに仕立ててあって、鳥肌&感涙モノでした。
 YouTubeに四つに分けてアップしてあったので、1本目だけ貼っておきます。先住民文化をツーリズムに取り入れた国際的アピールの良いお手本だと思いますから、特に観光業関係者の皆さんはぜひとも4本ともご覧ください。

 ◎YouTube「Rugby World Cup 2011 | Opening Ceremony | Vid 1 of 4 (HD)」

 実は我がネルソンも開催地の一つでして、つまり僕の勤め先ネルソン市役所が主催者です(イタリアチームをホストしています)。
 僕も当初は、ネルソン会場の危機管理担当官のアドバイザーとしてプロジェクトに関わっていたんです。でも昨年12月に大怪我して長期欠勤で、残念ながらお役御免......。あの開会セレモニーを見ると、あらためてつくづくもったいないことをしちゃったなと後悔しました。

 と、ここまでは例によって長い前振り。
 毎晩のように楽しくTVの前で観戦してるんですが、一番楽しみにしていたオールブラックス vs 日本戦がとっても残念だったんです。

 日本チームは、次に控えたトンガ戦に必勝を期して、勝ち目のないオールブラックス戦にはエース陣を温存したメンバーを発表しました。それに気分を害したオールブラックスは同じくエース陣を外した布陣で臨み、それでもなぶり殺し状態で日本を圧倒してみせました。

 別に結果はいいんです。日本が勝つなんて誰も思ってませんし、出場した日本代表選手たちは最後まで粘り強く素晴らしいプレーを見せてくれ、オールブラックス・サポーターからも賞賛を浴びていました。なぶり殺し、上等です。

 でもねぇ、やっぱりスッキリしません。きっと出場しなかった日本エース陣、オールブラックスと対戦したかったと思うんです。だって彼らの中にはキウィ(NZ人)選手だって何人か混じってるんですよ。彼らは、おそらくオールブラックスに入れないレベルの選手です。そんな彼らが祖国の最強メンバー(=世界最強メンバー)と対戦できるのは、この上ない栄誉のはず。出たかったんじゃないですかねぇ。

 「これでトンガに負けたらどーすんだよ」と思ってみてたんですが、そのトンガ戦ではほーらいわんこっちゃない、温存されてたエース陣がリズムを崩してて惨敗。
 結果論の仮定論(笑)ですけど、オールブラックス戦出てた方がトンガ戦でも試合勘が鈍らず身体がよく動いたんじゃないですか?  そもそもオールブラックスは上手いですから、日本選手だってめったなことじゃ大怪我なんぞしませんよ。
 日本の主力選手たち、今となっては余計に「こんなことならやっぱオールブラックス戦出たかったよ」と思ってるんじゃないでしょうか。

 オールブラックス戦とトンガ戦が中三日だったから仕方ないっていう声もあるようですが、僕はそう思わないんですよね。
 だって、なんでオールブラックス戦捨ててトンガ戦に賭けるんですか? トンガだったらパシフィックネイションズカップで毎年対戦できるでしょ?
 今回は4年に一度世界中のラグビーファンが注目する祭典ですよ。しかもオールブラックスって主催国代表チームで、世界ランキング1位で、145対17で惨敗した1995年以来16年ぶりの対戦です。そういう相手にあぁいう失礼な戦術とります? ホントに礼を重んじる国ですか?
 そういうセコいことやるくらいなら、ワールドカップ出てこないでパシフィックネイションズカップだけ出てりゃいいじゃないっすか。

 別にコーチ陣の独断だったとは思いませんよ。きっとどっかのお偉いさんからトンガ戦必勝命令が下ったんでしょう(ある筋の情報によりますと9月27日のカナダ戦も必勝命令が出てるそうですが)。
 でもそんなゲスな横槍を突っぱねられないのが情けない。こんな機会だもの、自分のクビをかけて
「ジュニアじゃないホンモノのオールブラックスの胸借りて力一杯玉砕してこい! トンガ戦やカナダ戦のことは考えなくていいから120%力出し切ってこい!」
って、ベストメンバーから順に交代で全員プレーさせてあげるべきじゃないです?

 世界のラグビーファンが日本チームに期待してたのも、トンガ戦勝利なんかじゃないですよ、ぜったい。僕らが見たかったのは、オールブラックス戦でのカミカゼアタックです。
 オールブラックス戦に力を出し尽くした日本チームが、トンガ戦に全員満身創痍のボロボロで出てきて惨敗してたとしたら、世界中から惜しみない拍手と賞賛が送られたに決まってます。4年後の日本は侮れんぞと思わせられたはずです。
 勝手なことばっか言ってますが、正直なファン心理です。

 もう一回いいます。8年後は日本が開催国なんですけど、そんなんで大丈夫なんですか?>日本ラグビー界
 他人のホスピタリティを無下にするヤツは、自分もホスピタリティに欠けるもんです。ツーリズム関係者としても、ものすごく不安なんですけどねぇ......。

 ちなみに一昨日(9月24日)、オールブラックスは苦手意識を持ってるフランス(世界ランキング5位)と対戦しました。
 全戦績は50戦37勝12敗1分と圧倒してるものの、前回の2007年大会では準々決勝でコロッと負けてるので、今回も国中落ち着きませんでした。
 中には「フランス戦に負けて予選プール(リーグのこと)2位で決勝トーナメントに駒を進めた方が、のちのち有利に戦える」などと、これまた大バカ野郎なタヌキの皮算用をする声もかなりありました(キウィにも、こういうこと考えるヤツいます)。でも僕は「フランスに負けたりしたら、また別のチームに番狂わせで足元すくわれるに決まってるだろ! 小細工なしで全部こてんぱんに撃破して優勝だ!」と息巻いておりました。

 結果はオールブラックスの完勝。やっぱり姑息なことはやらず、見事にたたきのめしてくれました。決勝トーナメントも力ずくで勝ち進む決意がみなぎってました。それでこそオールブラックス、さすが最強軍団!
 24年ぶりのワールドカップ優勝に期待!



 ◎財団法人日本ラグビーフットボール協会「日本代表情報 2011年」

 ◎『ALL BLACKS』

 ◎『Rugby World Cup 2011』

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