特集 瀬戸内ゴミゼロプロジェクト いつか、瀬戸内海の浜辺にも海面にも、そして海底にもゴミがゼロという状況を目指して進んでいくプロジェクト。

僕たちはシーカヤックやビーチコーミングなどの海遊びを続けているうちに、目の前にある漂着ゴミを視界から遠ざけることができなくなってきました。よく見てみると、それは海が起源のものもあれば、街が起源のものもあります。

6月14日、日曜日。梅雨の晴れ間の瀬戸内海は海も、空も爽快な青色!

約40人の方々が、高松港から小さな赤いフェリーで40分の男木島に渡り、ビーチクリンアップを実施しました。グループに分かれて、落ちているゴミのデータ調査を兼ねた清掃です。一週間前にアースデイ関連のイベントで清掃されたばかりの砂浜でしたが、小さなゴミはたくさん落ちています。約40分のビーチクリンアップの後、鹿児島大学准教授の藤枝さんが、藤棚の下で特別講義を開催。今回、特別に許可をいただいて講演録として公開いたします。海洋ゴミを考える上での参考にぜひしてください。そして、海に出かけましょう!

鹿児島大学水産学部 准教授 藤枝繁

藤枝 繁

昭和42年、大阪府堺市生まれ。鹿児島大学准教授。

1997年日本海でのナホトカ号重油流出事故の災害ボランティアに学生と共に参加して以来、海岸漂着ゴミを中心にした海洋ゴミに関する研究を開始。平成11年、市民による国際的な海岸ゴミ調査清掃活動である国際海岸クリーンアップキャンペーンを鹿児島でも展開しようと県内有志でクリーンアップかごしま事務局を設立。現在同事務局長。一方、シーカヤックのガイドとして鹿児島の海のすばらしさを広報している。

なぜ私たちは海岸清掃をしなければならないのか?

鹿児島大学水産学部 准教授 藤枝繁

皆さん、どうもビーチクリンアップお疲れ様でした。

ここから、少しの時間、「なぜ私たちは海岸清掃をしなければならないのか?」と題しまして、一緒に考えたいと思います。

まず、野生生物への影響から見てみましょう。ウミガメは何で呼吸するでしょう?

- そうですね、肺ですね。となると、呼吸するために海面に出てくる必要があるのですが、このカメさんは棄てられた漁網に絡まってしまって窒息したようなのです。

講演写真1

このアザラシさんも大変ですね。最初は遊びだったのかもしれませんが、バケツの底か何かの輪が口にスッポリ入っています。この先口が開かなくなって死んでしまう運命ですね。

このアシカは、これまた棄てられた漁網の網目の中を通ってしまって、引っかかり、なんとか逃げ出したようです。しかし、次第に体が成長して、網が首に食い込んで、赤い身が見えてしまってます。これでは近いうちに細菌に感染してしまいそうです。

次は、ミッドウェイに住んでるコアホウドリです。体長約2メートル。頭は人間の子どもの頭と同じぐらいです。雛と親です。親鳥が太平洋を飛び回って、餌をお腹にため込んで巣に戻って、吐き出して、雛に食べさせます。雛はそれを食べるわけですが、親鳥が吐き出しているこの丸いもの何かわかりますか?これはテニスボールなんですね。ゴルフボールじゃないですよ。雛は親鳥が出してくれるものは餌と思ってますから、パクっと食べてしまいます。親鳥は吐き出せますが、雛は吐き出せません。雛のお腹の中にはプラスティックなどのゴミがいっぱいたまっていきます。

死んだ雛鳥三羽の胃から採取した漂流物が、この写真です。

今日見たゴミがいくつか混じってますよね?例えばライター、ゴルフボール、おもちゃ、歯ブラシ、ペン、洗剤のキャップがあったり、漁で使う蛍光棒があります。そしてここにあるのが、20センチぐらいのパイプ、そう、カキの養殖パイプですね。これが太平洋に流れています。そして鳥が間違って食べて死んでいます。
このカキパイプは瀬戸内海の広島地方で使われているもので、瀬戸内海から確実に出て行って、はるかミッドウェイのコアホウドリの胃の中に入ってしまうわけですね。瀬戸内海で海岸清掃するのは、地元のためでもあるけど、瀬戸内海からゴミを外に出さないという意味もあるんですね。今日のビーチクリンアップはそういう意味もありました。

日本に世界遺産はたくさんありますが、北海道の知床岬も世界遺産です。この知床は、海の中まで世界遺産です。この浜辺にもおびただしい数のゴミが流れ着いています。三年前にクリーンアップに行ったのですが、羅臼から船に乗って近くに上陸して、ライフルを持った環境省のレンジャーに守られて現地入りしました。ヒグマが出るからです。それぐらい危険でハードなクリーンアップです(笑)。陸上を片道一時間歩きます。そして拾ったゴミ、大きな大きなゴミ袋、たっぷり詰まったゴミ袋をひとりで二つ以上、だいたい三袋持って、また一時間かけて帰ります。とにかくハード。

この知床のゴミはどこから来るかというと、ロシアではなくて、日本海の対馬暖流に乗ったゴミが、日本沿いを北にあがって、多くは津軽海峡を抜けて三陸沖に出ます。一部は宗谷岬を周って、最終的に知床岬に到着するわけです。世界遺産である知床が日本海のゴミの終着点なんです。


では、海洋ゴミが野生生物や自然環境に大いに影響を与えそうだということを感じてもらったところで本題です。

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ビーチクリンアップ(海岸清掃)は、ひとりでもできるし、黙々とただ拾うだけでも価値がある。けど、みんなで会話しながら、拾ったゴミを分類し、調査すると問題点の共有ができたり、何より楽しいんです。

それぞれの場所に、どんなゴミがどれぐらい落ちてるんだろうか?ゴミを出さない、ゴミをつくらない社会の実現のためにも、小さな調査の積み重ねが威力を発揮します。

その1 ビーチクリンアップのキャプテンになって主催する

■JEAN クリーンアップ全国事務局 (http://www.jean.jp/)

まずは、JEANのサイトにアクセスして、キャプテンになる方法があります。登録すると、マニュアル一式が送付されてきますので、あとは、そのマニュアルにしたがって実施しましょう。

その2 キャプテンはちょっと・・・

キャプテンになるのはちょっと荷が重いという方は、地域で開催されているクリーンアップに参加することをおすすめします。
同じく、JEANのサイトから情報入手できますので、お近くの会場へ足を運んでみませんか?

その3 少人数で、JEANの方式をやってみたい

正式な調査データにはなりませんが、少人数でもデータカードを使ってビーチクリンアップを実施することは意義あることと考えます。特に定点調査し、まとめていけば、貴重なデータですね。分析してわかったことがあればぜひ発表してください。
まず、JEANのサイトのデータカード画像を参考にします。

■世界ゴミ調査キャンペーンデータカード (http://www.jean.jp/captain.html)

これをもとに、手製のデータカードを作成ください。これを持って海に出かけます。
できれば、4人一組ぐらいで、ひとりはデータ記入に専念ください。他の人は拾ったゴミの種類と個数を読み上げます。

データカードは、

  • 破片/かけら類
  • 海、河川、湖沼
  • 上記以外で地域で問題とされているもの

にわかれています。あまり難しく考えずにテンポ良く拾っていくのがいいと思いますよ。

□用意するもの

  • データカード
  • 下敷き、筆記用具
  • ゴミ袋
  • 手袋
  • 救急用品
  • 飲み物
  • カメラ

□注意事項

  • 危険ゴミは拾わない。(医療ゴミ、信号弾など)
  • 重いものは無理しない。
  • 鋭利なものは気をつける。
  • 中身のわからないものは開かない。
  • 紫外線に注意。
  • 子どもたちは必ず家族が見るように。

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