ライフスタイル [ネイチャーフォトグラファーへの道]
ネイチャーフォトグラファーへの道 六歩目

文&写真:リュウ・タカハシ
2009年9月3日
■ 五歩目までのあらすじ ■
天の啓示を受け、なぜかネイチャーフォトグラファーを目指すことになってしもぉた拙者。とりあえず雑誌の「一週間で風景写真が見違える」という特集を参考に修行を積むことに。三日目の課題を参考にとりあえず実際にフィールドでロケハンを敢行。そして翌日、いよいよ早朝撮影に挑もうとするのだが......。
■ 苦手 ■
「拙者」が「オレ」だった頃、いやもっと前の「ぼく」だった頃から、どうにもこうにも苦手でたまらなかったことが、二つある。いや、実は二つどころじゃないんだけど、とりあえず今は二つだ。
走ることと、早起きだ。
走るのが遅いわけではないが、なぜだか走りはじめるとすぐに両肩関節と股関節が激痛に襲われるし、自律神経失調症の関係で体温が急激に下がって必ず下痢になるやっかいな体質。だから命に危険が迫らないかぎりは、なるべく走りたくない。
早起きも似たようなもので、無理して早起きすると、身体が熟睡モードのまま一日中過ごすことになり、体調が瀕死状態になる。徹夜の方がずっとまし。これまた典型的な自律神経失調症。
世の中には早朝ジョギングが趣味だの日課だのと、身の毛もよだつようなことをシャラッという人がいるから驚く。e4のメンツの中にもどうやらそういう化け物がいるらしいが、どういう身体してるんだ。尊敬、畏敬を通り越して、恐怖さえおぼえる。拙者がやったら即死間違いなしだ。
何の話だ、写真の連載だろうって?
その通り、写真が問題なのだ。ネイチャーフォトグラフィーと早起きが切っても切れない関係だと気づいたのは、天からの啓示を受けてずいぶんと経ってから。しまったぁ、気づいてなかったぁ、ウカツだったぁ。って、もう遅ぇよ。
ようするに写真にはまりはじめたとはいえ、良い写真を撮るために夜明け前に起きるなんて無茶なことはやったことがなかったのである。
だって趣味ごときで早起きしてたら、死ぬかもしれないではないか!
しかし、天の啓示には逆らえない。桂治(以下同文)。やっぱり早起きせざるを得ない。アンセルよりもイワゴウよりも、まずこれが拙者にとっては高すぎるハードルなのである。
え? 走るのは何の関係があるんだって?
いや、別に関係ないんだが、早起きと並べると何となく語呂がよくてシックリ来るからご登場願っただけのこと。あまりお気になさらぬよう。
■ いざ早起き ■
目覚ましセット。起きるぞ、起きるぞ、明日は起きるぞ。絶対起きるぞ。起きられるぞ。拙者は早起き得意だぞ。早起きなんて、別に大したことじゃないぞ。簡単だぞ。バッチリだぞ。
よ、よし、ね、寝るぞ......。
ピピピピピピピピピピ。
ヨッシャー、朝だぁ! 写真撮るぞぉ。高橋二等兵、天候確認だ!
ラジャーッ! キャプテン、東の空に薄くたなびく雲発見しました!
でかした! 朝焼けが期待できるではないかっ! 出撃準備だっ、二等兵!
ちゃんと起きられるじゃん......。しかも、なんだよ、そのテンションの高さ、平日と大違いじゃん。
歳か? 歳食っちまったのか?
それとも、ガキか? 遠足の日に早起きするガキといっしょか?
どっちにしても、人生面白いのぉ。この歳になるまで、この拙者が元気いっぱいに早起きができるたぁ、ちーっとも知らなんだ。また一つかしこくなった。
ちなみに走るのは、歳を食った分ますます苦手になっていく一方の拙者高橋是捨であった。
■ というわけで、早朝撮影 ■
いざ出陣。前日ロケハンをしておいたスティーブンズベイ、カイテリテリ方面へと愛馬、もとい愛車を駆る。
おっとぉ、被写体発見! こんなとこにこんなモノがあったのかぁ! 早朝でないと気づかないぞ、これは!
スティーブンズベイまではまだ遠いが、これを撮らない手はない! 高橋二等兵、攻撃準備っ! 打てっ! もとい、撮れっ!
撮影日:2009年5月30日(土)
場 所:リワカ
カシャッとな。
う~ん......。
実はこの樹を丘の上に見つけたとき、拙者の脳裏に浮かんだのは、この写真だった。
フリーマン・パターソンの教則本『PHOTOGRAPHING THE WORLD AROUND YOU: A VISUAL DESIGN WORKSHOP』のP.69より。
図書館で相当使い込まれた本から、相当使い込んだ拙者のスキャナでスキャンしたものなので画質は良くないが、それでもこの写真はやっぱり素晴らしい。三分割法の基本も破ってるし、左右対称をさけるというセオリーも破ってるが、さすがにプロがルールを破るときってのは破るだけの理由があるんだぞ、という説得力あふれる一枚。老木と大宇宙との対話が聞こえてきそうな作品なり。
それにひきかえ、この写真を思い浮かべながら撮った写真がこのざま。
どういう記憶力してるんだよ。これじゃまるで、B.B.キングのブルースを思い浮かべつつ弾き語りしたら、はじめ人間ギャートルズのオープニングテーマ曲になってしまった、ってな感じだ。視覚センスのなさがモロばれ。
拙者、ガッカリ。
いや、ここでめげてはいかん、例によってレスキューを試みるのだ。
ダメか?
ダメだな。
まったくダメダメであるな。
玉砕。
■ 朝焼け ■
ま、いいや、過去は振り返らない、次は頑張る。よし、スティーブンズベイへ向かって進攻だ、二等兵!
あ、またもやストップ~ッ!
撮影日:2009年5月30日(土)
場 所:リワカ
カシャッとな。
う~ん......。
実はこの朝焼けをバックにした樹を道路際に見つけたとき、拙者の脳裏に浮かんだのは、この写真だった。
この教則本、不思議なことに著者が良く分からず、したがってこの写真の撮影者も不明なのだが、『NATURE AND LANDSCAPES: Creating a sense of place』 という本に載っていた一枚。US Amazonのサイトにも出てこないな。なんだろう、この本???
それはともかく、これまた全然違う構図になってしまったことあるのことよ......。サイモン&ガーファンクルを歌ってるつもりが、なぜかあみんになってた、っていうくらい違わないか、これ?
今こうやって比べてみると、もうちょっと樹を大きく画面に入れ込んだ方が良かったような気もするし、現像するときに色目ももう少し地味目に焼いた方がよかったような......。
こんな感じでどうだ?
......。どうちょん切ってみたって、ダメなもんはやっぱダメか......。
って、これじゃぜんぜん目的地に辿り着けんではないかぁっ!!!
はたして拙者は、良いタイミングでスティーブンズベイに到着できるのかっ!?(続く)
■ 参考文献 ■
- 『NATURE AND LANDSCAPES: CREATING A SENSE OF PLACE』 1993, Cassell Camera Wise Guides, Cassell Villers House LONDON, P.27
- 『PHOTOGRAPHING THE WORLD AROUND YOU: A VISUAL DESIGN WORKSHOP』
1994, Freeman Patterson, P.69
■ おまけ:NZコレクション アウトドア冬の装い■
撮影日:2009年5月30日(土)
場 所:カイテリテリ
頭にはフリルネックU.T.E.、上着はゴアテックスのロングコート、そして足元はゴム長。昨日とは打って変わって、隙のない完璧な冬のアウトドアの装い。我ながら見事。進歩、進歩。
さぁ、これで波打ち際に立ち込んで写真撮れるぞ。成果やいかに!?
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