ライフスタイル [ネイチャーフォトグラファーへの道]
ネイチャーフォトグラファーへの道 弐歩目

文&写真:リュウ・タカハシ
2009年6月22日
■ 修行開始の前に ■
さてさて。
舌の根の乾かぬうちとはこのことだが、いきなりイワゴウII世はちとハードルが高い。なんせここにゃシマウマもキリンもいないので、いかんともしがたいのである。
それともアフリカまでの取材費出る?>編集長
いや、返事は分かってるって。アフリカ案は無期延期。
だが気落ちすることはない。ここはニュージーランド(NZ)だ。風光明媚なら売るほどある。ならば風景写真から修行だ。首を洗って待っておれ!>アンセル・アダムス(おいおい......)
■ では教科書をば ■
前回申しあげたとおり、当面の教科書は英国No.1写真雑誌『Practical Photography』の2007年9月号の特集、「Special Course! Better Landscapes In Just 7 Days!」(一週間で風景写真が見違える)。
これで修行して、半年後にはアンセル・アダムスを倒し、一年後にはリキドーザンを蹴散らし、最終的にはジェームス・ブラウンをひざまずかせて天下を取る所存。
この特集のオープニングページ(PP.74、75)には、左下に悪い例、でっかく見開きで一週間後に同じ場所で撮ったらこんなに上達した!ってな写真。右下に七日分のカリキュラム。カッコ良い。
これみてると、なんだか拙者にも出来る気がしてきたぞよ、うむ。では参るか。
■ 第壱日目「Analyse your pictures」 ■
さて、初日のカリキュラムは、「Analyse your pictures」、あなたの写真を分析しなさい、か。
なるほど、課題の洗い出しだな、順当な手順だ、うむ。
チェックポイントは露出、天候、光線、場所、フレーミング、構図の六つ。
見開き作例は、こんな風に分析してある。
- 露出
NDグラッドフィルターのおかげで、空と前景の露出バランスはとれている。しかし廃墟の岩に太陽光が反射し、部分的に白飛びしている。 - 天候
嵐の暗雲がドラマチックなムードをかもしだして空にディテールを与え、山脈や廃墟を完璧に補完している。 - 光線
早朝の低い陽光が風景の質感を際だたせ、暖色を加えている。しかし遠景の山脈が陽を浴びるのを待つべきだった。 - 場所
背景にスノウドン山がそびえるこの廃墟は、最高のロケーションだ。 - フレーミング
写真下端に建物がかかっているし、左の方に無駄なスペースがある。 - 構図
三分割法に忠実に右下に建物を配しているのはいいが、左側にそれに見合うだけのモノがなく、バランスが悪い。
拙者にとってはカッチョエェ写真だが、プロの目にかかるとケチョンケチョン......。厳しい世界じゃのぉ。
NDグラッドフィルター:
空に露出をあわせると陸が暗くなり、陸にあわせると空が白飛びするような、ありがちな困った状況で、空だけを暗くして全体のバランスをとるためのフィルター。
たとえば前回の夕焼け空写真も、これを使って空を暗くしておけば、家並みが真っ黒につぶれずに写ったということらしい。便利だ。拙者も欲しいぞよ。
【追記】日本では「グラデーションフィルター」または「ハーフグラデーション」と呼ばれていると、友人の写真家K氏にご教授いただいた。多謝。
三分割法:
画面を上下左右にそれぞれ三等分線を引き、その結果できた四つの交点のうちのどれかに主役を持ってくると、おさまりが良いという構図の定石。
主役がど真ん中にある写真は、日本では俗に日の丸写真とよぶ。
スノウドン山:
酢っぱいウドンのてんこ盛りとは因果関係がきわめて薄く、どうやらウェールズ最高峰の名前というのが真相に近いらしい。
さて、自分の写真をこうやって分析しなさい、ってことだ。ただしちゃんと良いところも見つけなさいって強調してあるのが、さすが褒め上手な英国文化。
■ 褒めまくるぞ>拙者の写真 其の壱 ■
こうやって改めてみてみると、けっこうたくさん撮りためてるもんだな。さて、どれからいこう?
おっそうだ、某雑誌の創刊号に寄稿したら、特集記事のオープニングページに見開2ページ全面ドッカ~ンと使われて、おっタマゲタことがあった。まずはあれでいこう。

撮影日:2006年8月31日(木)
場 所:エイベルタズマン国立公園サンドフライベイ
よし、ほめるぞ。フレーミングと構図を分けるのは面倒なので、構図にひとまとめにしよう。
- 露出
OKっぽい。日中シンクロ(補助的なフラッシュ発光)してないのに、顔も写ってる。やるじゃん(褒)>拙者、もとい、Canon EOS Kiss Digital N - 天候
締め切り間近で天候を選ぶ余裕はなかったのだが、雲一つない青空って、写真に撮るとマヌケだ。 - 光線
被写体の顔が影になっていないのは、冬の低い太陽のおかげ。真夏だとこうはいかない。ラッキー。 - 場所
すごく美しい場所だが、背景の茂みが冬枯れで、きたない。 - 構図
パドルが画面から切れてる。背景の砂浜に、二人の頭を横切る線がある。もっと被写体に近づき、カヤックの上に立ち上がって広角レンズで撮るべきだった。
近景にも何のアクセントもないのがさびしい。ビーチが画面を斜めに横切る位置から撮るべきだった。
......。褒めるとこ、ないじゃん......。
せめて三分割法くらいはOKだとうれしいのだが、さぁどうだ、エィッ!

ダメじゃん。
上下方向にはど真ん中。どうせ空がノッペリとディテール皆無なんだから、カメラをもう少し下に向けて右上の交点に被写体を持ってくるべきだった。
この定石なら紅で美な高校生の頃から知ってて、カメラを持つ時は意識してるつもりだというのに、結果はテイタラクだ、コノヤロ、バガヤロ、あぁ情けない。
さらに上記チェックポイントには入っていないが、エイベルタズマン国立公園名物の美しい水の色が、反射光のせいでまったく分からないのも減点。実はこのときはPLフィルター(偏光フィルター、水面の反射などをカットしてくれる)を持ってなかったので、どうすることもできなかったのだが。
構図的にも広角レンズを使うべき場所だったが、同じく持ってなかった。
構図に関して、もう一つ。
シーカヤッカーが撮った写真には、手前に自艇が写っているモノがやたら多い。拙者はそれに辟易していて、なるべく自艇が入らないように撮るクセがある。お客様のカメラで彼らを撮るときは、特に気をつけていた。
この写真もそうだが、あらためて見直すと、手前にアクセントがない場合は、自艇を入れ込むのが吉ってこともあるんだなと大反省。下手なクセに妙なこだわりを持つのは、やっぱりイカン......。
けっきょくラッキーな光線とカメラまかせの露出くらいしか褒めるところがない。
つまり自分ではなぁ~んにもコントロールできていない。典型的な「適当にシャッターを切ったら、たまたま撮れた写真」だ。
どうだ、参ったか>アンセル・アダムス
なんだか腹カッサバいてお詫びしたくなった今日この頃......。
■ なんとかレスキューできないだろうか ■
いや、ここで死んでは、もうしわけが立たぬ。フレーミングやレンズやフィルターは今さらどうにもならんが、ちょっといじってみるとしよう。

トリミングして構図を少し変えた。
さらに、変化のない空の上端と人物が反射しているあたりの水を中心に、少しだけ焼き込んで色を濃くしててみた。ちょびっとくらいはマシになっただろうか?
でもやっぱり左がさびしい。バランスが悪い。しまりがない。
さらに、空を小さくしたら、枯れた茂みのきっちゃねぇ色が際だってしまった。
■ もうちょっとレスキューを続行してみる ■
きっちゃねぇ茂みの色を直接いじってしまう手もあるが、むしろこうなったら、この手だ。エイッ。
白黒変化の術。
空、手前の水をさらにもう少し焼き込み、白っぽすぎるビーチもちょっぴり焼き込み、コントラストを調整。
......、ダメだ。茂みの色は解決するが、その代わりに色彩でごまかせなくなった分だけフレーミングのまずさが際だつ......。特に人間の顔を横切る背景の線は絶望的だ......。
けっきょくなすすべなく白旗、降参。無念でござる......。
■ 次回は ■
当時はここまで分析できたわけではなかったが、それでもこの撮影後に広角レンズとPLフィルターの必要性を痛感し、清水の舞台からスカイダイブして購入。
次回は、購入後の写真をまな板に。さて、どう変わったか?
■ 参考文献 ■
- 『Practical Photography』 September 2007, PP.74-79
- 『Process』 (株)アドアサヒ 2006年10月号, PP.16-17
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