インプレッション [ギア]
開発秘話 - フリルネックU.T.E.編
文:リュウ・タカハシ
2010年5月17日
e4の母体(株)ゴーフィールドが日本総代理店として輸入しているフリルネックU.T.E.は、以前ギア・インプレッションのページでもご紹介したし、つい先日内田さんのインプレもアップされた。
僕は(株)ゴーフィールドが代理店になるずっと前から個人的にこの帽子を取り扱っていたので、メーカーとのおつきあいもずいぶん長い。ただ、このユニークな帽子が産まれたきっかけは、一度もたずねたことがなかった。もちろん今までにもずっと気になってて、そのうちきいてみようと思っていたのだが、ついのびのびになっていた。
これじゃイカンと一念発起、このたびようやくインタビューに成功したので、さっそくご紹介することにしよう。
インタビューに答えてくれたのは、創業社長のジェイソン・ホール氏(以下J.H.)、聞き手はリュウ・タカハシ(以下R.T.)。
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R.T. - 日本ではSPF(サン・プロテクション・ファクター)という紫外線防止指数が一般的で、フリルネックU.T.E.がうたっている「UPF 50+」にはあまりなじみがないんですが、何か違うのでしょうか?
J.H. 「UPFはウルトラバイオレット・プロテクション・ファクターの略です。SPFとUPFは同じようなものだと思うのですが、おそらくUPFの方がより専門的な用語なんじゃないかと思っています。オーストラリアやアメリカではUPFの方が一般的のようです。」
R.T. - UPF指数には、特別な基準やルールがあるのでしょうか?
J.H. 「はい、オーストラリアには、オーストラリアン・ラディエーション・プロテクション・アンド・ニュークリアー・セイフティ・エージェンシー(ARPANSA)という政府組織があって、紫外線や放射線などの情報やテストに関しては一番の権威なんです。もちろん厳格な検査基準があります。
紫外線に関する詳細な情報は、ここで見られますよ。」
R.T. - 南半球の方が紫外線が強いといいますから、ARPANSAの基準は厳しそうですね。
じゃぁフリルネックU.T.E.の素材も、ARPANSAのテストをパスしてるわけですね。
J.H. 「もちろんです。当社にマイクロメッシュを供給している会社は、定期的にARPANSAのテストを受けていますが、すべてのカラーバリエーションが毎回最高値のUPF 50+をとっています。」
R.T. - それはスゴイ。僕自身は最近ポリエステルコットンライクラ(以下PCL)のモデルをよく使ってるんですが、こちらもUPF 50+ですよね?
J.H. 「これは表だって宣伝してないんですが、実はマイクロメッシュよりもPCLの方がさらにUPF性能がずっと高いんです。実際にはUPFは50+が最高値なので、その上のスコアはないのですけど、仮にそれ以上のスコアがあるとすれば、PCL素材はUPF 80くらいになるはずです。」
R.T. - えっ! そんなにすごいんですか!?
J.H. 「ただこれは、生地が伸びていない状態での測定です。頭にかぶると生地は引っ張られてその分UPF性能は落ちますから、かぶった状態ではちょうどUPF 50+くらいになるでしょうね。」
R.T. - えらく謙虚ですねぇ......。ではこんどは、このユニークな帽子が誕生するまでの歴史を教えていただけますか?
J.H. 「オゾン層が破壊され、発がん促進性の強い紫外線量が増えることを初めて知ったのは、1990年代のはじめごろです。私はサーファーでしたから、激烈な紫外線に長時間さらされてることが、すごく気になるようになったんです。」
R.T. - あ、サーファーだったんですか! けっこう長いおつきあいですが、存じませんでした(笑)
J.H. 「そうなんです。
そんなわけで、とりあえずサーフィン中や日陰のないビーチでかぶれるような帽子を作ることにしたんです。いろいろな型紙、生地、ファスナーなどの組み合わせを手縫いで試行錯誤を繰り返した末に、ついにできあがったのがフリルネックU.T.E.の第一号だったわけです。」
R.T. - なるほど、サーフィン中にも脱げない帽子というのが、あのユニークな機能の秘密だったわけですね。
J.H. 「はい。ですから私も完成した瞬間、
『なんで最初っからこれを思いつかなかったんだろう?』
と思いました。
作っている間はサーフィンのことしか頭になかったんですけど、できあがった帽子を見ると、日光や風から身を守りたいと思っているあらゆる人にピッタリだったからです。サーフィン中に脱げないように工夫した結果、さまざまな状況に合わせていろんなスタイルに変化させられる汎用性がうまれたんですね。」
R.T. - サーフィンにこだわったのが発明の鍵になったってのは、非常に面白いお話です。
J.H. 「私もできあがってからコンセプトのユニークさに気づきました。すぐに特許をとり、製品化しました。1995年のことです。以来15年、お客様の声をもとに改良を続けています。」
R.T. - 僕が出会ってからの12年間にも、ずいぶんモデルチェンジしましたよね。でも当時まだ誕生からたった3年の製品だとは思いませんでした。すでにすごい完成度でしたよね。
J.H. 「オーストラリア軍にも評価していただいて、長年正式採用されていることは私も誇りに思っています。ただ、軍に納入しているミリタリーバージョンは、本当はもうちょっと改良したいと思っているんですけどね。」
R.T. - ところで困ったこと、大変だったことはありませんでしたか?
J.H. 「唯一の悩みは、コピー製品対策です。費用もバカになりません。裁判で勝訴したこともありますが、愉快な経験ではありません。」
R.T. - オーストラリアやニュージーランドには類似製品たくさんありますもんねぇ。ご苦労お察しいたします。
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