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フリルネックU.T.E.

文:リュウ・タカハシ
2009年6月13日

 あまり上等じゃない道具を使いこなすのが好きだ。気むずかしい道具が突然ふっとなじむ瞬間はゾクリとするし、それ以降は技術向上を実感できるのもうれしい。
 心理学では、これを「調節」というのだとか。逆に道具を身体に合わせるのは「同化」というらしい。高機能な道具を追い求める人を同化型と呼ぶかどうかは知らないが、もしそうなら僕は調節型だ。別の世界の専門用語では、マゾヒストともいう。

 カヤックも最初は同化型だったが、ある程度上達したら、何でもいいやという調節型になっちゃった。
 他のアウトドア道具も同じで、最新式のバックパック、ジャケット、ブーツ、ウォーキングスティックで装備したバックパッカーの横を、穴だらけでペナペナの木綿ズダ袋を背負い、田植え足袋をはいて(あるいは裸足で)歩いている僕である。浮浪者?

 逆からいえば、ようするに道具にこだわるのがきらいなのだ。

frillneck02.jpg ただそんな僕にも「悔しいが、これじゃなきゃダメだ」っていう道具の一つや二つは、やっぱりある。
 その一つが、フリルネックU.T.E.
 面白い縁だが、この帽子との出会ったときのことは、e4の前身ともいえるGofield.comのトレッキングレポート「マウント・アーサー」でご紹介している。記事中には登場してないが、この登山に誘ってくれた人がフリルネックU.T.E.をかぶっていたのだ。

 ニュージーランド(NZ)の紫外線は日本の数倍といわれ、真夏の日本よりもこっちの真冬の方がキツイほど。だから後に布の垂れた帽子をいくつか買って試した僕は、彼のフリルネックU.T.E.を見て衝撃を受けた。「それどこで買ったの!?」と勢い込んでたずねたら「オーストラリア。NZで手に入るかなぁ?」という答えだったが、二ヶ月後にフリマで露天売りしているオバチャンを発見し、四つほどまとめ買いした。

 使い心地に感動し、自分のサイトに掲載したのが日本初紹介。そのうちオバチャンが使えねぇライバル商品に鞍替えしちゃったので、仕方なく自分で輸入し、さらにオンラインバッタ屋を起ち上げて通販するようにもなり、いつしか僕のトレードマークになってしまった。
 さらに今回、このe4プロジェクト起ち上げにあたって、日本の輸入販売総代理権までとってしまったのだから、縁というのはなんとも面白い。

frillneck01.jpg いきさつはともかく、フィールドに出るときにコイツが頭に巻きついていないと、どうもいけない。パンツをはき忘れる方が100倍ましだ。日本帝国陸軍敗残兵といわれても、気にしない。
 10年間のガイド生活で、何度か忘れて出勤したことがある。そのたびに会社の制帽やらお客様の忘れ物やらの、いわゆるベースボールキャップを借りて使ったが、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ぜぇ~んぜんダメッ! 違和感ありまくりで、仕事に集中できない。気が散るだけじゃなくて、物理的に陽光をちゃんとさえぎってくれないから、仕事にならない。いつも何気なくかぶってるフリルネックU.T.E.の強力さを思い知らされ、「ういヤツじゃのぉ、忘れてすまんかったのぉ、カンベンしておくれ」となるのであった。

 さっきも書いたが、NZやオーストラリアには、こういうデザインの帽子はたくさんあって、フリルネックU.T.E.以外にもいくつも試したが、どいつもこいつダメ、ダメ、ダメ、ダメ、やっぱりぜぇ~んぜんダメッ!
 他の帽子とフリルネックU.T.E.が違うところはいっぱいあるが、シーカヤックガイド的に一番大きなポイントは、耐風性。そして保温性と涼しさのバランス。ためした帽子の中で一番風に強いのがフリルネックU.T.E.だったし、温かくて涼しいという矛盾した性能を一番ムリなくバランスとってるのも、やっぱりフリルネックU.T.E.だった。

 ちなみにこちらではガーデニング用としても非常に人気が高いし、なんとオーストラリア軍でも使っている。この汎用性の高さってのは、半端じゃない。

 デザインは好みが大きいので、機能性ほど断定的な書き方は出来ないんだけど、ためした中ではやっぱりフリルネックU.T.E.が一番カッコよかったと思う。でもファッション音痴だからな、僕って......。

 ってな感じで、アンダースペックな道具をがんばって使いこなすのを好む僕としては例外的に、超高機能、多機能なこの帽子だけを偏愛し続けた10年間であった。
 一つ気にくわないのは、我がNZ製ではなくてオーストラリア製だってことだ。なんでオージーなんぞにこんな素敵な道具を作れるんだ、ブツブツ......(NZ製の類似製品は、上記のようにことごとくダメ、ダメ、ダメッ!)。

frillneck03.jpg とにかく、コイツは裏切らない。
 アウトドアでもファッションにこだわり、敗残兵スタイルなんて論外だと思う方には、もちろん薦めしない。
 でも「アウトドアはやっぱ機能だろ」という方には、お薦め。こだわるのが嫌いな僕がこだわってしまうくらいよく出来てるから。我が家は、そろって愛用。
 僕のオンラインバッタ屋でも、多くの方がリピーターとして繰り返し買って下さっている。

一度お試しあれ。





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