テーマ [森]
ツリーイングで感じる木の温もりと優しさ
文・写真:内田一成
『ツリーイング』という新しいアクティビティがある。
木の枝に「アーボリストロープ」というロープを掛け、独特なロープワークを使ってハーネスにぶら下がって登っていくもの。田舎育ちの大人たちが子供の頃、素手で木に取りついて登ったり、日本の伝統的な林業が「ブリ縄」と呼ばれる縄を使って職人芸のように登るのと違って、誰でも安全に楽に登れるのが特徴だ。
元々は、欧米のアーボリスト(樹芸士)と呼ばれる木の剪定などを行う専門家に用いられてきた技術で、ロープを使って高い木に登り、木の上で剪定などの作業を行うために発達してきた。その技術のシンプルな部分を使ってアクティビティとしたのがツリーイングだ。
しっかりと安全が確保された上で、体力もさほどいらずに登れるので、今まで木にまともに触れたことのない人や子供たちでも気軽に楽しむことができる。
都会の中のありふれた公園。そこに生える何でもない広葉樹。初夏の瑞々しい新緑や秋の紅葉で人の目を楽しませ、真夏には涼しい木陰を提供してくれるこの広葉樹は、それだけでもぼくたちにとって素晴らしい自然だ。
でも、いつもならかいま見るだけで通り過ぎてしまうか、ほんの少し木陰のスペースを借りるだけのその木に触れ、「登らせていただきます」と、木に挨拶してロープを掛け、木肌に触れながら登りはじめると、思いもかけない世界が広がってくる。
木肌に触れれば、木も人と同じように体温を持ち、柔らかく張りのあることに気づく。そして、ぶら下がるぼくたちを受け止め、優雅にしなるその感触に、木と自分が一緒に踊っているような気がしてくる。
高度を上げ、周囲を見渡せば、いつも見慣れているはずの公園の風景が一変してくる。いつも目線の高さで平面にしか見ていないその視野のいかに狭いことか......。木はいつも高いところから、この公園全体を見渡し、もっともっと広い世界に視野を広げていることがわかる。
太い枝の上に登り、枝に沿って寝そべってみると、木がリズミカルに風に揺らぐのが感じられる。揺らぎの方向や緩急は微妙に変化し、時折、間近にやってくる鳥たちの声も混じると、木は自分は動けなくとも、遠くの気配を風や鳥と対話しながら理解しているのではないかという気がする。
何百年も何千年も生きる巨木を前にすれば、誰でも畏怖の気持ちを抱く。同じように、公園に生える何でもない木でも、その木に触れ、身を委ねてみると、大地との堅い結びつきを持つ木という存在を素直に畏怖できるようになる。
これから、何回かに分けて、そんな木と触れあう「ツリーイング」の世界を紹介してみたいと思う。
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