前回は、世界の紫外線の状況と、オーストラリアの紫外線対策についてお伝えしましたが、今回は、日本の学校の紫外線対策についてご紹介します。
1 皮膚科の先生たちが対策を呼びかけました
2 プールで日焼け止めクリームを使用すると水質が汚染される?
3 2018年 千葉市教育委員会は、日焼け止めクリームを生徒が校内で使えるように通知
1 皮膚科の先生たちが対策を呼びかけました
2015年9月に、日本臨床皮膚科医会と日本小児皮膚科学会が、「学校生活における紫外線対策に関する統一見解」を発表しました。
その中で、次のような対策を呼びかけています。
○屋外活動は、紫外線の強い10~14時はなるべく控えること。
○夏から秋にかけて、皮膚は色素を増し角層(皮膚の最外層)が厚くなり、紫外線の抵抗力が強くなる。そのため、運動会などの行事は、春よりも秋にする方がよい。
○屋外活動では、つばが7cm以上の帽子を被ること。服は七分袖、襟付きで体をおおう部分が多いもの、織目がしっかりした綿か、ポリエステル・綿の混紡素材のものを選ぶとよい。
○日焼け止めクリームを使うことも推奨。学校生活では「SPF15以上」、「PA++」であれば十分。屋外活動の15分前までに塗ると肌に馴染む。2~3時間ごとの重ね塗りが効果的。
○プールの授業では、プール外では体育着などを水着の上から着用すること。泳ぐ時にもラッシュガード(注1)を着用して紫外線を防御することを推奨。
○必要であれば耐水性・ウォータープルーフの日焼け止めクリームの使用の許可をすること。
(注3)ラッシュガード:紫外線、すり傷から肌の守るために、プールやマリンスポーツ時に着用する衣類。
オーストラリアのサン・スマートプログラムにかなり近い内容になっています。
日本臨床皮膚科医会と日本小児皮膚科学会がこのような見解を発表した背景には、まだ日本の学校では紫外線対策が十分でないという危機感からでしょう。
皮膚科医が子どもたちを診療していて共通して問題だと感じていたのは、小学校に進学すると、子どもたちが学校内で日焼け止めクリームを自由に塗れなくなるケースがあることでした。
2 プールで日焼け止めクリームを使用すると水質が汚染される?
2008年、第107回日本皮膚科学会総会で発表された「サンスクリーン(注2)使用がプール水の水質におよぼす影響について-日本小児皮膚科学会の取組み-」では、全国小学校3000校にアンケートをおこない、1147校から回答を得ています。
(注2)サンスクリーン:日焼け止めクリーム
「紫外線対策を実施しているか」の問いには、56%の学校が「実施している」と回答しています。具体例としては、プールの日よけ、長袖、帽子の着用などです。
学校内での日焼け止めクリームの使用状況は、すべての授業で「すべての児童に禁止」と「原則禁止」としている学校は11%でした。プール授業で禁止している学校は、14%だったそうです。禁止をしている理由は「プール水の汚染」が最多でした。
調査では、実際に小学生60名に日焼け止めクリームを塗ってプールに入ってもらい、2週間ごとに水質を測定。日焼け止めクリームに含まれる亜鉛および化合物が溶け出しているか測定したところ、結果は検出されませんでした。これによって、プール授業で日焼け止めクリームを使用しても、水質および安全性が確保できる可能性があることを報告しています。今後も試験結果を蓄積し、学校で子どもたちが日焼け止めクリームを問題なく使えるよう、情報発信することが必要だと訴えています。
日本の学校での日焼け止めクリームの使用が進まない理由を、日本臨床皮膚科医会の島田辰彦先生はこのようにも指摘しています。
「日本では、1980年に化粧品メーカーが日焼け止めクリームを発売した際に、化粧品のコマーシャルが出たため、日焼け止めクリーム=美白目的というイメージがついてしまった。アメリカでは医薬部外品なんです。」
「美容」のイメージが定着していることが、日本の学校では積極的な使用が進まない一因になっているのでは、と分析しています。
3 2018年 千葉市教育委員会は、日焼け止めクリームを生徒が校内で使えるように通知
2018年4月26日付けの新聞記事によると、千葉市教育委員会が3月に市内の中学校55校を対象に、日焼け止めクリームの使用について調査したところ、2校が原則禁止していたことが判明しました。他の学校では、職員会議で協議し、校長が承認しているケースが多いことも判明。
3月の市議会で議員が、日焼け止めクリームの学校への持参について質問したことがきっかけとなり、千葉市教育委員会は、生徒の健康を第一に考え、日焼け止めクリームの持参と使用について柔軟に対応したいとの見解を示しました。環境省策定の「紫外線環境保健マニュアル2015」を参考に対策を取りまとめて、市内全校に通知しています。
屋外で長時間活動する際は、日焼け止めクリーム、帽子、衣類の使用だけでなく、プール時に水着の上にラッシュガードを着用することも認められました。教職員は児童・生徒に、適切な対応をとって紫外線を防ぐよう指導することも求められています。
千葉市長も自身のツイッターで、積極的に推奨したいと伝えています。2児の父親でもある市長は、お子さんが生まれてから、子どもへの紫外線の影響を勉強されたそうです。
日本の学校の紫外線対策は、先進諸国の中でも遅れていると皮膚科の先生たちが指摘しています。
イメージにとらわれず、正しい知識を身につけて、適切に対策していきたいですね。
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※UFPとは:Ultraviolet Protection Factorの略
世界でもっとも紫外線対策の歴史があるオーストラリア/ニュージーランドで定められた紫外線カットの評価基準のこと。素肌のまま20分程度で肌が赤くなる紫外線量を想定した場合、UPF45+は45倍の約15時間は日焼けを防ぐ効果があります。
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参考サイト
学校生活における紫外線対策に関する日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の統一見解 2015.9
http://www.jocd.org/pdf/20150929_01.pdf
第107回日本皮膚科学会総会イブニングセミナー「学校における紫外線対策 課題解決に向けた取組み」2008年
https://www.shiseidogroup.jp/rd/doctor/informationletter/backnumber/pdf/2008_001_01.pdf
毎日新聞ニュース 千葉市教委「日焼け止め使用許可を」全中学に通知へ 2018.4.26
https://mainichi.jp/articles/20180426/k00/00e/040/227000c