
藤枝 繁
昭和42年、大阪府堺市生まれ。鹿児島大学准教授。
1997年日本海でのナホトカ号重油流出事故の災害ボランティアに学生と共に参加して以来、海岸漂着ゴミを中心にした海洋ゴミに関する研究を開始。平成11年、市民による国際的な海岸ゴミ調査清掃活動である国際海岸クリーンアップキャンペーンを鹿児島でも展開しようと県内有志でクリーンアップかごしま事務局を設立。現在同事務局長。一方、シーカヤックのガイドとして鹿児島の海のすばらしさを広報している。
では、私たちにできることを最後に考えてみます。
瀬戸内海に年間入ってくるゴミの量は全体で4,600トン。陸域から入ってくるのが3,100トン。海面発生が1,300トン。外洋からは200トンです。逆に、流出側ですが、今回の回収、つまり市民活動のクリーンアップ、海岸清掃、海面清掃や海底ゴミ回収、漁協や国交省の事業などをあわせて1,300トン。海底に沈む量が700トン。残りは外洋に出て行っていると考えられます。
さて、ここで陸から入ってくる年間3,100トンというのがどれぐらいの量かというと、瀬戸内海の沿岸人口、11府県、3,176万人で割ると、ひとり、年間あたり、120gとなります。空の500ミリリットルのペットボトル4本分の重さですね。
この中で、胸を張って、川や海にゴミは出していない!と言える人は手を挙げてみてください。いませんか?いませんねぇ。

皆さん、120gなら一年間に出してるかもしれませんよね。120gというのはほんのわずかな量です。まぁ、いいかー。あ、飛んでっちゃったー。が積み重なると、今の海ゴミの現実になるわけです。
発生抑制をしましょう!と声高に叫んでも、ひとりあたりにするとほんのわずかな量なので、そう簡単な話ではないわけですね。難しい。
では、どうすればいいのでしょう。
まずは、クリーンアップなどで回収量を増やすと外洋に出る量が減ります。逆に回収をあきらめてしまうと、ゴミの現存量は1.4倍になると予想されます。陸域からの流入量を減らせば、もちろん全体の量が減ります。
なかなか難しいと言われている発生抑制を知恵を総動員して頑張りつつ、海岸などでの回収の促進を毎年毎年続けていくことが肝心です。
ただ、単に拾うだけでは難しいのですが、今日のようにデータ調査しながらだと、小さなゴミにも目が行くし、みんなと喋りながら、問題共有しながら、会話しながら楽しく仲間作りも伴って実施すれば、単なる広告利用したピーアールよりも効果があると思います。ですので、ぜひ海に行く機会があれば、友人知人に声をかけて、調査しながら楽しみながらゴミを拾うという活動の輪を広げてみてはどうでしょうか?
その輪が広がっていけば、瀬戸内海はもっともっと美しい海になります。瀬戸内海を美しくするということは、地元のためだけではなくって、太平洋に出て行くゴミも減らすことになります。普段のゴミとの付き合いも、地元の話だけではなく、遠く離れた太平洋の先の島にも関係がある問題だと思って、適切に処分くださいね。
ご静聴ありがとうございました!