ライフスタイル [ニュージーランド歯をくいしばってのんき暮らし]
Home Weed Home たんぽぽのお酒
文&イラスト:Ryoko
写真:リュウ・タカハシ
2011年11月23日
かれこれ もう20年以上も昔 大学の英語のクラスで 『Dandelion Wine』 by Ray Bradburyを読みなさいという課題が出ました。
「グエ~ ホント こんな 分厚いの 英語で読まなきゃいけないんですかぁ」と お腹のあたりをすっぱくしつつ 洋書を購入。
その日の内に 町の本屋で 晶文社刊 邦訳版『たんぽぽのお酒』もゲットし 一安心したのも束の間 原書はもちろん 邦訳を読んでも む~ん む~ん・・・ ぜんぜんピンとこない・・・。
言葉がわかっても内容も分るとは限らない という認知科学的実験に再度成功したのでありましたが、 それにしても 「タンポポでどうやってお酒 作るんだろう」と これは猛烈にひっかかりました。 私にとって ここがもう作品のメイン であった訳です。
毎度ながら 季節が逆なニュージーランド ただ今 春真っ盛りでございます。 照ったり 降ったり 降りながら照る。 風もあっちからビュービュー こっちからゴーゴー。 すると ナチュラルテイストと申しましょうか ちょっぴりワイルドと申しましょうか ご近所でも顰蹙・・・いやいや 評判のそんな我が庭には タンポポがドドーッと咲きます。
タンポポ、 種も蒔いてないのに 律儀に毎年バンバン咲くし 可愛いし ミツバチも嬉しそうだし いざとなったら食べられるところなんかも とても 気が利いていて 私は好きなんですが・・・ 綿毛をブンブン飛ばしてしまうのは やっぱり 芝生文化圏のここでは 罪な気分なんですね。 花の間に使っちゃえば良いんだよねぇ と 思いながらも 生食は限度があるし・・・。 やっぱりあれか! 20数年前の仇をとるか! と 思っていた そんな折も折 プライベート図書館員さん(夫です)がこんな本を借りてきてくれました。
さて 忘れ去られた もしくは 忘れ去られそうなレシピが 分厚い本にびっしり。 そこにやっぱりありました。 タンポポのお酒。
ブラッドベリ自身の少年時代のオマージュ的作品である「たんぽぽのお酒」。
ブラッドベリが生まれたのが1920年。 作品中の少年は12歳。 ということは年代的には 1930年くらいの話なはずですが すでに 「たんぽぽのお酒」は おじいちゃんが作った なんだか素敵で そして不思議な飲み物 として描かれていた(はず)。
そうか・・・ そうだったら もう「忘れ去られた」というところに入ってしまっても 不思議はない飲み物なんだろうなぁ。
こういう非常に趣味的なものは 作り手がいなくなれば なくなっちゃうんですよね。
さて レシピがあるんだったらと ネット検索したり Home Wine Making の本を借りてきたりして 暫し情報収集。
で ぴっかぴかに晴れた真昼間を狙って ミツバチを蹴散らしながら 力いっぱい タンポポの花を収穫しました。
って 力いっぱいやっても ガク付きで350グラム。 ここから 花びらだけをガクからはずす作業。 幸いこういう単純作業に向いている人が他に約2名(娘達)いるので 女だけで井戸端花びらむしり大会。
収穫できた花びら300グラム。
を ホーロー鍋にいれて やおら熱湯を2リットル。 蓋をして2日間寝かせる。 2日経ったら 鍋を火にかけ 沸騰直前で火を弱め 無農薬のオレンジの皮をおろしたもの 2個分投入 さらに10分間 弱火のまま加熱。
火からおろし 量っておいたグラニュー糖(NZには酒税法ありませんので800グラム)の上に さらし布を通して濾し入れ 砂糖を全部溶かす。
人肌まで冷めたところで オレンジの絞り汁2個分と イースト(私はAll Purpose Wine Yeast)を小さじ1/2を加え 発酵用容器の中に液体注入。 エアロックをして 発酵が治まるまで2ヶ月ほど待ち あとは 澱(おり)引きしてボトリング。
そこから半年くらい寝かせ 冬場、 北半球だったら丁度クリスマスが 飲み頃なんだとか。
さて 今の私のタンポポのお酒。 発酵開始から1ヵ月半経った状態で そろそろ1回目の澱引きしようかな~ という感じです。
で 昨晩 おもむろに比重計を取り出し 測ってみたら・・・ 1.000(つまり水の比重です)を割っている。 しまった アルコールに傾きすぎた!(ちなみにアルコールの比重は0.8) おやおや それではちょっとお毒見。
辛口・・・。 お腹がボっとなるけど お味は 結構イケてる?みたい
とりあえず これはこれとして 澱引きしてみます。最終的なボトリングはもう1回澱引きしてからでしょうか。
こうやって 春になったらタンポポのお酒を仕込む というのを繰り返したら 私の子供達 春になったらタンポポを山盛り摘むのだ と 後にこれを伝えていくようになるでしょうか。 そして タンポポなんかを安心して使える そんな環境に住んでいられるでしょうか。
お金の世界にそぐわないばかりに その存続が危ぶまれる こういうのんびりした文化を伝え、 そしてシンプルなだけにデリケートな この文化を支える環境を さまざまな「汚染」と「忘却」から守るのも 私達世代の務めなのかもしれないな と ちょっと思います。
ニュージーランドに移民し 何の規制もなく ワインやビールを作るに付け、 それにつけても 日本の そう日本だけの酒税法が のどの奥に引っかかった魚の骨のように 私の日本人としての魂をチクチクと刺激してやみません。
明治32年から今日に至るまで その長きにわたる規制によって その結果 日本人がワイン作りを むりやり忘れさせられてしまったことに 怒りと悲しみを覚えます。 それ以前は ドブロク作り以外に 季節季節に出来る果物や花を使った その家 その土地独特のお酒作りがあったはずだと思うのです。 これこそが 本当のForgotten Skills for Cookingであり そして もう取り戻せない「日本人の心の一片」 かけがえのないものだったんではないでしょうか。
あ、そうそう 酒税法のお蔭でまた大事なことを忘れてしまうところでした。 ブラッドベリの「たんぽぽのお酒」ただ今映画製作中なんだそうです。 映画だったら 共感できるかなぁ と ちょっと期待。
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