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ヤマハPASでポタリング

文・写真:内田一成

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 電動アシスト自転車というと、実用的な高級版「ママチャリ」といった印象があるが、最近、スタイリッシュなモデルやスポーツモデルも登場し、自転車ブームも相まって新しい形のコミューターとして注目されている。

 東京は、桜もちょうど見ごろだし、のんびりポタリングするのも楽しそうだ。というわけで、ヤマハが原宿に構える情報発信拠点"EX'REALM"で小粋なPASを借り出して、さいたまの自宅まで走ってみることにした。

 じつは、先週借り出す予定でいたのだが、白馬でツリーイングのイベントを行って、戻ってきたら重度の花粉症が出てしまって、とても表に出られる状況ではなくなってしまった。この10年あまり、花粉症も快方に向かっていたので安心していたのだが、白馬の何が作用したのか、かつて「春に花粉症の併発症で死ぬ」と確信していた頃同様の重篤な症状が出て、とても表を自転車で走れるなどという状況ではなくなってしまった。

 それも、桜の開花宣言と共に急速に回復してきたので、「いざ実行!」と、出掛けていった。

 以前、ロードバイクやMTBで多摩サイクリングロードを走っていた頃は......といっても、もう10年以上前のことだが......一日70から80km程度走るのはたいして苦ではなかったので、距離は40km弱だし、なんてったって電動アシストだしと、タカをくくっていた。

 14時過ぎにエクスレルムを訪ねて、しばし支配人の加藤さんと談笑して、フル充電しておいてもらったPAS-CITY-Cリチウムのスペシャルカラーモデルを借りて、原宿を後にした。PASにはBraceというスポーツモデルもあるけれど、今回は、あえて気軽に街を走れるさりげないモデルのCITY=Cを選んでみた。ちなみに、ぼくが借りたのはモデルチェンジ前のもので、現在はアシスト率などが変わって、より軽快に乗りこなせるものになっている。

 PASで走り始めて、いきなり実感したのは、原宿から新宿、池袋といった都心付近はとても坂が多いということ。それもかなりの急坂で、自転車で移動している人はかなり苦労している。みんな上り坂で体重をかけて立ち漕ぎしたり、諦めて自転車を押したりしている中を息も荒げず、平然と追い越していくのは、なかなか優越感がある(笑)。

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**原宿のエクスレルムを15時45分に出発**

今回、GPSを用意してきたのは良かったのだが、事前にルートを吟味せずに、オートルートで指定されたコースを走ったため、新宿駅界隈や池袋駅前といった人でごった返す中に突入してしまった。車道も混み合っていて危険だし、人混みの中では徒歩にスピードを合わせて、邪魔にならないように進むしかなく、ストレスが溜まる。それでも、軽く踏み込めばスッと進んでハンドリングが安定する電動アシストのおかげで、極低速でもふらつくことなく、なんとかこの人混みをかわすことができた。

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**高田馬場を16時15分に通過。電車&徒歩とほとんど変わらない所要時間で、途中に坂がたくさんあったけれど電動アシストのおかげで疲れもほとんどなく、天気さえ良ければ、この移動のほうがはるかに快適だ**

 ようやく山手線沿線から抜けて、住宅街に入っていくとホッとする。GPSは幹線道路を行くようにルーティングしているが、排気ガスを吸わされながら車と併走していてはせっかく自転車で走っている甲斐がないので、わざと路地へ入っていく。

 今回はGARMIN GPSMAP60CSというアウトドア用のハンディGPSをハンドルにマウントしたが、これは、規定のルートを逸れても、カーナビ同様にリルートしてくれるので、お構いなしに気になる方向へハンドルを向けることができる。

 「ポタリング」や「サイクリング」というと、自転車を漕ぐことも楽しみの重要な要素となるわけだけれど、電動アシスト自転車の場合は、もっと「移動手段」的な割り切りの度合いが強い。何かテーマがあって、移動は極力効率的に自由にしたい......そんなニーズにはまさにぴったりだ。車では、都会の中をチマチマと移動するのに向かないし、自転車では山坂で余計な体力を使ってしまう。モーターサイクルはかなり近いが、車道を走らなければならないし、一方通行にも従わなければならない。それにヘルメットの置き場や駐車スペースも困る。そんなことを考えると、仕事で都会の中を移動する、あるいは何か目的を持って移動する手段として理想的だ。

 ぼくは、以前から若狭で行っている不老不死伝説を巡るツアーを自転車を交通手段に使いたいと思っていたが、けっこうな山道があって、中高年には辛いので、それをクリアできればという課題があった。今回、PASを都内で走らせてみて、これはまさにツアーに最適だと感じた。

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**ようやく山手線沿線の混雑を抜けて、路地巡りのサイクリングに。しかし、行程の1/10程度しか走っていないのに、インジケーターを見ると、すでに20%も電力を消耗している......**

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**板橋の路地裏で、『縁切り榎』を発見。「悪縁をたちどころに絶ち切れる」とのことなので、真剣にお参りしようかと思ったが、先客がいて、あまりにも真剣に、鬼気迫るオーラを発してお祈りしているので、腰が引けてしまった**

 東京と埼玉を分ける荒川に掛かる戸田橋。このたもとまで20kmあまりはなんとか電池切れせずにたどり着いた。インジケーターの目盛りは、あと一つ。橋を渡りきり、埼玉県に入ったところで、ついにアシストできるだけの電気が切れて、インジケーターは点滅して、ライトへの電力供給ストックのみとなってしまった。この日は気温も低く、リチウム電池にとっては辛かったこともあるし、何よりぼくの自重=82kgの影響が大きい。それでも、山坂の多い都心を抜けて、あとはたいして起伏もないので、アシスト無しでも思った以上にスムースに進むことができた。

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**戸田橋に差し掛かるところで、ついにインジケーターは最後の目盛りに......**

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**荒川の上流に沈む綺麗な夕陽を見送ったところで、ついにエンプティー**

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**ラストスパートは、人間のほうにエネルギー補給で乗り切った**

 電池が切れてからは、上り坂で軽快なロードバイクに追い抜かれる度に、「こいつがスポーツタイプだったらなぁ」と、やや悔しくはあったが、それでも、こんな街中向けの小径お手軽タイプで40kmあまりのサイクリングを難なくこなせるというのは、やはり電動アシストならではといえる。

 これだけのポテンシャルがあれば、立派に「シティコミューター」としての役割を果たすことができる。日々の通勤通学用としてはもちろん、買い物にもいいし、これなら子供を乗せても安定していて安全性も高い。

 そして、山坂の多い土地でのレンタサイクルの可能性もとても大きいと思う。電動アシストがあれば車重はさほど気にならないので、ツーリング用のモーターサイクルにあるようなロック付きのパニアケースなどを装備して、積載性を高めれば、もっともっと電動アシスト自転車の活躍の場が広がっていくだろう。

 ちなみに、こんなモデルをベースに、前後にハードなパニアケースを装備したら良さそうだと、密かに青写真を考えはじめている。


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**黄色い線が、今回のトラック。普通、ミニサイクルで踏破するコースではない(笑)**

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**GPSが記録したトラックデータ。移動平均速度が13.5km/hということは、スポーツサイクル並みのアベレージだ。だけど、疲労度はスポーツサイクルよりも少ない**

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