コラム [Viva New Zealand]

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日本の自然、NZの不自然

文&写真:リュウ・タカハシ
2009年7月24日

 ニュージーランド(NZ)の美しさって、広告業界では昔から有名だったみたいです。キンチョーのカッパ川流れCMの清流も、初めてみたときは「これどこ!?」と驚きましたが、NZだったんですね。でも引っ越してみたら、もっときれいなのがいくらでもあって、もう一度ビックリ。

 世界に美しさを知らしめるきっかけは、やっぱりハリウッド映画でしたね。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ『ラスト・サムライ』『ナルニア国物語』シリーズなどを観て、そのままNZ行きの飛行機を予約しちゃう人は、今でもあとをたたないようです。

 ところがですね、日本人にはぜひとも知っておいていただきたいことがあるんです。
 ガイド時代にご案内した日本人の多くがNZの自然を絶賛し、「それにひきかえ日本は......」とおっしゃってました。
 とんでもない!
 砂漠の国オーストラリアや、もうほとんど森が残ってないヨーロッパの人たちが言うなら、そりゃそうでしょうとうなずきます。
 でも日本人の口から出ると、ちょっと待った~っ!です。

 日本の森林面積率はご存じですよね? そう、約7割だといわれてます。
 ではNZは? 8割? 9割?
 ブッブー。

 ◎Ministry for the Environment「Land Cover」

VivaNZ005_forest.jpg NZ環境省のサイトです。地図の下の表にご注目。Native Forestってのが原生林、2002年時点で6,483,100ヘクタールです。国土面積が26,821,600ヘクタールですから、たった24%なんです。そのほとんどを国立公園とか保護区域に指定して、なんとか死守しようとやっきになってるのが、NZの現状です。
 これに植林9%を加えても33%、日本の半分にとどきません。
 地図のすぐ上に書いてあるように、森以外の原生植物まで含めた面積が、かろうじて50%。これに植林9%を加えてもやっと59%。森以外と材木畑を無理矢理計算に入れても、まだ日本にはかなわないわけです。
 日本は必死に森を守ろうとしてるようには見えませんし、人口も数十倍です。でもこの結果。

 別の資料を見てみましょう。

 ◎Statistics NZ「Land」

 NZ統計局です。ここにはマオリが発見した頃のNZは85%が森に覆われてたのに今は23%、と書いてあります。なんと国土の6割相当の森を焼き払ったんです、この国のご先祖様たちは。

 環境省サイトに戻ってみると、すさまじい面積(39%)を占めているのが牧草地。地図でも黄色が目立ちます。羊の国というNZのイメージを、バッチリ裏づけてくれます。
 ここに日本人にとっての落とし穴があるようです。牧草地って「自然」じゃありません。森を焼き払ったあとの「不自然」です。
 キンチョーCMよりきれいな清流はいくらでもあると書きました。でもちょっと雨が降ると牧場から泥が流れこみ、アッという間に濁流になります。ひどい話でしょ。
 ところが日本人は見渡すかぎりの牧草地をみて「うわぁ、キレイ! 素敵! 自然がいっぱい!」と目を潤ませます。大規模自然破壊の跡なのに。この視点が日本人の弱点だなぁと、いつも感じます。自然が好きで、環境に関心を持ってる人でさえコレですもん。

 もう一つ日本人が見落としがちなことがあります。

 「NZの森を見てどう思います?」
 「キレイです、すごいです、大きな古い樹がいっぱいあって」
 「確かにそうなんですが、樹の種類、どうですか、日本に比べて?」
 「あ、少ないかも」
 「じゃ、下草みてください。どうですか、種類豊富ですか?」
 「あ、単調......」
 「下草どけてみてください。どれくらい虫が出てきます?」
 「あまりいませんねぇ......」

 一見派手なNZの自然ですが、ちょっと冷静になって祖国の里山と比べてみると、驚くほど単調です。
 干潮時の岩場でタイドプール(潮だまり)をのぞくのが大好きって人は少なくないでしょう。小魚、エビ、カニ、貝、ヤドカリ、イソギンチャク、ウミウシなどなど、あきずに一日中ながめてて、日焼けでひどい目にあったって人は、僕だけじゃないはず。ところがNZの潮だまり、日本と比べるとやっぱり単調です。日焼けしにくくて安心?
 釣りもそうです。フライフィッシング天国といわれてますし、NZの本屋さんには超大物のタイを手にしてニカ~ッと笑ってるオジサンが表紙になった釣り雑誌がいくつも並んでるので、魚だらけかと思ってしまいます。でも日本と比べて魚影が濃いわけではありません。むしろ薄いといってもさしつかえないかと。

 たまに一時帰国すると、日本の自然の濃さには本当に圧倒されます。
 街中の空き地でさえ、足元の雑草の多様さには目を見張りますし、ちょっとほじくるとこれでもかと生き物が這い出てくるのでうれしくなります。里山の草木の種類の多さは驚愕ものですし、生育の勢いもすさまじい。きったねぇドブ川をのぞいても、おどろくほど多くの生物がしぶとくうごめいていて、つくづく日本の自然のしたたかさを感じさせられます。しかも繊細で美しいわけですよ。
 資料は見つけられなかったのですが、植物にしても動物にしても虫にしても、日本に棲息している種類は、NZよりも一桁多かったと記憶しています。
 自然がこんなに力強い国って、世界中でもそうそうあるもんじゃないんです。

 哀しいことに、当の日本人がここんとこにちゃんと気づいていないんですよね。わざわざ外国まで自然を観に行かなくても、ちょっと気をつけて小綺麗にしてやれば、日本だって絶景だらけの国になるはずなんですけど。
 いや、別に外国の自然を観に行ったって良いんですけどね、でも隣の芝だけが青いわけじゃないんですよ。
 極端な言い方をすれば、NZなんかは割と貧弱な自然を、必死に世界にアピールしているわけです。日本なんか、もっと自慢しても良いんじゃないですか?

 ちょっと改めてお家のまわりの小自然をみまわしてみてください。きっとNZの原生林よりもはるかにたくさんの種類の生物がみつかるはずです。

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